『こころ』

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渡辺和子

星の王子さま』の中で、王子が砂漠に水を求めに行くところがあります。あてどもなく歩いてゆくと、月の光を受けて砂漠は美しい。
王子が言います。「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」
人間もそうです。表面に表れない「井戸」を心の奥深くに持っている時、人は美しくなります。それは、他人に言えない秘密を持って生きるというようなことではありません。

一人ひとりが自分の存在の奥深いところに一つの「聖所」とでも呼ぶべきものを持ち、年とともに大切に育ててゆくということなのです。
そこは他の誰にも、親にも、配偶者にも、親友にも、恋人にも踏み込ませない自分の心の部分であるとともに、どんなに愛し、信頼した人から裏切られた時にも、逃れて自分を取り戻し、自分を立て直すことのできる場所です。
騒がしい人混みの中でも孤独になれる場所であり、一人でいても寂しくない所以(ゆえん)です。
体のどの部分にあるかと尋ねられて指し示すことはできないけれども一人で生まれ、一人で死んでいかなければならない人間が、その一生の間、自分らしく生きるためにどうしても必要な「場所」なのです。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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