小林正観
薬剤師の方は、こんな質問をされました。「実は私は今、薬局を続けるべきかどうか悩んでいるんです」「それはまた、どうしてですか?」と私。「いろいろな勉強をしてきて、薬というものが、本当に人に役立っているのか、と思うようになりました。薬を売れば売るほど、人の体を壊しているような気がして…」
「薬局の方は、やめることも考えているということですか?」
「もちろんそうです。薬害とかもありますし、薬というものが本当に役に立つものなのか、と」
最終的に私がした提案は次のようなことでした。「薬局に薬を買いに来る方は、体の不調や痛みを抱えている人ですよね。その人たちの“とりあえずの”対症療法薬として、薬を売るという立場は肯定してもよいのではありませんか。そして、そこに罪悪感のようなものがあるなら、こうしてみるのはどうでしょうか。
それは、今までの薬局の薬剤師としての仕事の10倍の量を、“世のため人のため、社会のために”貢献するということに費やす、ということです。そうすれば、今までの仕事は、自分の人生の10分の1でしかなくなるから、自己嫌悪や罪悪感は、ずいぶん薄くなる。しかも、“仕事”はそのままですから、生活か収入とかの部分もクリアできる。ただし、今までの10倍ものエネルギーで生きるわけですから、人生は大変に過酷なものになります。それができれば全て解決だと思いますが」
「投げかけるものがマイナス100であっても、その結果、200のプラスを投げかけようと決意をし、実行したら、結果的に神は喜んでいるんじゃないか、と
私もその生き方でいきます」薬剤師の方は美しい笑顔でした。そこから始まった具体策も、楽しいものになりました。それは、「こんな生き方やこんな考え方の人が、こんな病気になるみたいだ」というコピー資料を、とりあえず10種類くらい作ってみよう、というもの。
“現場”におられるのですから、そういう“統計的”な推論を得やすい立場なのです。私たちのやりとりを聞いていた方は、「そういうふうな解決方法をとったら、クヨクヨしたり自分を責めたりしないですみますね。いつでも、それが10分の1になってしまうような、プラスの投げかけ10倍を考えていったら…」
知り合いがアルコール依存症になり、彼が退院したあと断酒会に一緒に出席したことがある。断酒会では、色々な人がいたが、酒屋さんをやっている方もいた。お酒は、適度に楽しむ人にとっては、人を魅了する極楽の液体となるが、アルコール依存症の人にとっては悪魔の水となる。だから、酒屋を続けるかどうか悩んでいた。
自分の仕事にもし、少しでも罪悪感があったら、この対処の方法が非常にソフトで芸術的な解決法となる。今やっている仕事をやめずに、それ以上の投げかけを「世のため、人のため」にしていく。
これは、何も仕事だけのことではない。生きることにおいても、まったく同じこと。もし、マイナス100のことをしてしまったら、プラス200のことを投げかければいい。マイナスのことをしてしまったことは消えないが、それ以上のプラスを投げかけることでどんどんそれを薄めることができる。マイナスのことに焦点を当てるのではなく、プラスのことに焦点を当てる。
エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

