強運の法則

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本田健

私がよく行く日本料理店に、徹底的に仕事を究める料理人がいます。彼は、メインではない付け合わせの野菜一つにも、見事な飾り包丁を入れます。
たとえば、ニンジンで紅葉を、キュウリで青葉を表現したりするのです。たしかに、それによって美しさが増し、私たちの目を楽しませてくれていますが、それをしなくても彼の料理は充分に美味しいのです。

あまりにも手間がかかりすぎではないか。連日満員の人気店なのだから、その手間をほかに回したほうが得なのではないか。そう思った私は、一度聞いてみたことがあります。「どうして、こんな面倒なことをするんですか?」
すると、「面倒くさいと思ったら、そこから、さらに三手間かけるようにしているんです」という答えが返ってきました。その手間があるからこそ、お店は流行っているのだと。彼の答えにしびれました。だから私も、彼を見ならって、本のゲラをチェックするときなど「もういいだろう」と思ってから、さらに最低三回は見直して、修正、加筆するようにしています。

どんな仕事でも、手を抜こうと思えば抜けるし、さらに手間をかけようと思えばかけることができます。たとえば、上司に「〇〇について三つの案を金曜日中に出してくれ」と言われたら、三つの案を期限ぎりぎりに出してよしとするでしょう。その中には、「まだ詰めが甘いな」と感じる案も交ざっているはずです。「でも、まあ、言われたとおりに出せたから、いいや」これが、普通の人の働き方です。
でも、運を開いていく人は、ここに「ちょっとプラス」を心がけます。三本と言われたところを五本出してみる。期限より一日早く、木曜に出してみる。あるいは、案を出すだけでなく資料をつけてみる。こうした小さなひと頑張りによって、この人は、全然違うという印象を与えることができます。

そうやって、他の人にはつかめない運をつかんでいくのです。小さなひと頑張りをプラスしても、すぐに実利につながるとは限りません。もしかしたら、その頑張りに上司はなかなか気づいてくれないかもしれません。しかし、「手を抜かずにやった」という気持ちは自分の中に残ります。
それはとても大事なことなのだと思っています。いつも手を抜くクセをつけていれば、それに見合う結果しか手にできません。見る人は、ちゃんと見ています。やがて大きなチャンスが訪れることは、間違いないでしょう。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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