『小さな人生論 5』

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藤尾秀昭

人生に運とツキというものは確かにある。しかし、運もツキも棚ぼた式に落ちてくるものではない。人生は、かすかな一念の積み重ねによって決まる。

新潮社を創業した佐藤義亮氏に、浅草で商いを手広く営む知人があった。ある晩、その人の店が全焼した。翌日、佐藤氏が見舞いに駆けつけると、なんと、知人は酒盛りをして騒いでいるではないか。
気が触れたか、とあきれる佐藤氏に、知人は朗らかに言った。「自棄(やけ)になってこんな真似をしているのではないから、心配しないでください。私は毎日毎日の出来事はみな試験だ、天の試験だと覚悟しているので、何があっても不平不満は起こさないことに決めています。
今度はご覧のような丸焼けで、一つ間違えれば乞食になるところです。しかし、これが試験だと思うと、元気が体中から湧いてきます。この大きな試験にパスする決心で前祝をやっているのです。あなたもぜひ一緒に飲んでください」その凄まじい面貌は男を惚れさせずにはいない、と佐藤氏は言っている。知人は間もなく、以前に勝る勢いで店を盛り返した。

〇大和ハウス工業・樋口武男元会長
「人の道を守らない人間、親を大事にしない人間、恩ある人に砂をかける人間に、運はついてこない」人生の真理はシンプルである。

〇仏教には輪廻の思想がある。人は何度も生まれ変わる、というものだ。
そして、生まれてくるときには、自分に対し、いくつもの試験問題を作ってくるという。自分が向上するための試験問題だ。「自分が越えられない問題は起きない」という言葉があるが、自分自身が自分のレベルアップのための問題を作っているのだから、当然といえば当然だ。だから、運がいい人は、そのことを分かっているから、愚痴や文句をいわない。

〇「すべては、必要、必然、最善」(船井幸雄)
今自分に起きている問題は、すべて、自分にとって必要であり、必然であり、最善なのだ。そして、それは自分の成長のために必要な「何か意味のあること」。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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