『一秒宝(いちびょうほう)』

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小栗成男

「1分で話してください」会議のとき、私はよく言います。ダラダラ話は会議をダレさせ、つまらなくする元凶だからです。無駄に長い話が続くと、出席している人たちの時間泥棒にもなります。
1分=60秒という時間で、自分はどれだけのことを話せるか、あなたは把握できていますか?時計やタイマーを使って、実際に時間を計りながら、60秒以内で話をする練習をして、自分の中に60秒の感覚を植えつけてください。
こういう話をすると、若い世代は自分のビジネススキルを上げようと、すぐにやる人が多いのです。そのあたりの向上心が薄いのが、実はマネジメント層です。立場が高くなり、いろいろなところで話をする機会が多いはずですから、いっそう必要なスキルだと思われるのですが、経験豊富でそれなりの立場にある自分の話は、とても意味のある話だ、と思い込みがちなところがあるのです。

実際には、みんなが苦言を呈せなくなっているだけです。最近、私は1つのパターンに気がつきました。
会議で自分の話す番が来たときに、さっと時計やスマホを見て時間を確認している人は、60秒感覚を磨いている人。
チラリとも時計を見ない人は、「1分で話して」という私の言葉を、なんとなく短くしろと言われているくらいにしか思っていない、60秒の話し方を考えていない人。この予測は、かなり当たります。

60秒以内でコンパクトに話をまとめるには、話し方にコツがあります。
1. まず、結論を言う。
2. 次に、その理由や根拠。
3. そして、具体論。
最初に、この発言で、自分は何を伝えようとしているかを簡潔に話します。
その後に、どうしてそう考えるのかという理由、根拠を話す。
これの長さによっては、3.の具体論まで話せないでしょう。
しかし肝心なことは1.と2.で話していますから、要点は伝わります。
そこで、「もう少し詳しく聞かせてくれ」と言われたら、3.の話をすればいいわけです。

まず結論を言うという人は、仕事のできる人が多いです。
ところが、そこから具体論になってしまって、話が間延びするケースが多いのです。
細かい話は最後。時間がなくなって話すのをやめたとしても支障がないようなことは、後回しが基本です。
簡潔な話し方で大事なのは、全体像がわかるということです。確かに1分で終わったけれど、部分的な話に終始していて、全体が見えないというのでは困るわけです。

忘れてはいけないのは、「自分が何を言いたいのか」ではなく、「相手は何を知りたいのか」という視点です。その会議は、何を目的とするものなのか。誰に、何を伝えるべき会議なのか。それによって、話の内容、質は当然変わります。直属の上司が知りたいことと、取締役が知りたいことは違うのです。
その会議のキーパーソンは誰か。その人が知りたいであろうことは何か。
そこが見えていない人は、的外れな話をしてしまうのです。
簡潔とは、手短で要点を押さえていることを言います。場の目的に合った話ができなくてはなりません。

もったいぶっている人は、話をするとき、結論を後にいう。しかし、仕事のできる人は、結論を先にいう。結論を先にいう人は、「一言でいうと」ということを常に考えている。話が間延びしないし、次にどんな展開になるのかと期待させる。
落語家のような話芸のプロなら結論(オチ)を最後にしても笑いはとれるが、一般の素人はそうはいかない。プレゼンにしろ営業にしろ、スピーチにしろ、人をひきつけるには、結論を先に言うことだ。1分で話す習慣を身につけよう。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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