『いい会社をつくりましょう』

Pocket

伊那食品工業会長、塚越寛

モラールアップ経営とは、たんなるテクニックで成りたつものではありません。いわば、社長の考え方や生きざまそのものです。ここで肝心なのは、社長の考え方や生きざまを、どうやったら社員すべてに浸透させるかということです。一人で威張っているだけでは、社員たちに理解させ、行動につなげることはできません。そこで、「知らしめること」の重要さが出てきます。

たとえば、会社を訪れたお客様から、職場の環境が「きれいだね」、「美しいわね」というお褒めのことばをいただいた場合、一部の関係者だけが喜ぶのではなく、全員にこの事実が伝わる仕組みができていることが大切です。
社員旅行に出かけたときに、当社の社員がバスの中にピーナツ一つ落とさないで、バスガイドさんから「これだけ騒いで、これだけバスをきれいに使う団体さんは他にない」と褒められる、といったことも同様です。

褒められたことを、全員が知ることが大切だ。こうしたことの積みかさねが、社員自身の中に誇りを育てていきます。社員一人ひとりの日々の言動が向上し洗練されていくと、幸福感が高まり、やがて結果的に業績にも反映されていきます。

経営とは「知らしめること」であります。経営者は、話し上手、伝え上手でなければなりません。伝えることがうまくいかないと、経営はうまくいきません。経営とは伝えることであると言ってもよい。どんなに高い志も、話が下手では伝わりません。古今東西、人間は、伝えることにどれほどのエネルギーを費やしてきたことでしょう。企業も行政も、「伝える」ために大きな費用を使い、情報産業は巨大なものに育っています。

会社として、お客様に向けては多大な費用と労力を使って伝えていますが、それと比較して会社の内部に伝えることに重きをおいている経営者は少ない。トップの理念や考え、指示やその目的を社員に伝え知らせることは、モラールアップの最大の手段です。組織のトップは、組織を構成する人たちに徹底して自分の考えを知らせる努力をしたい。
情報を、バラバラでなく系統立てて伝え、それを必要とする社員が等しく共有するということをきちんとやっていれば、おのずから社員の行動様式はまとまり、モラールも向上していきます。ガラス張りで隠しごとをしないことも、情報伝達を円滑に行うためには大事だと思います。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

Pocket