『身軽に生きる』

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医師、矢作直樹

どう考えても人の道を外れているのにお金で動いてしまう、道徳心を吹き飛ばして信念を曲げてしまう人が、世の中にはいます。自分さえ良ければいい、儲かればそれでいい。そう考えた瞬間、その人から社会性が消えます。
社会性は「おかげさま」と「おたがいさま」の心で構成されています。人間は社会的な生き物ですから、その人から社会性が消えると周囲が誰も助けなくなります。「仲間ではない」と認識されるのです。

自分さえ良ければいいという人が増えると、社会の成熟度が低下し、やがて社会そのものが崩壊します。国家が破たんするときは、こういう人が蔓延します。インターネットという匿名世界ではびこる罵詈雑言、現実の世界で起こるストーカーやクレーマーによる事件。眉をひそめたくなるような状況を見ていると、日本の社会も海外の例に漏れず、成熟度が下がっている気がします。

この道徳心に関連して、大切なことがあります。それは「人によって言葉を選ぶ」ということです。一見すると正直さが欠けるような表現に思えるかもしれませんが、これが実はとても重要なことなのです。人は、それぞれ成熟度が違います。「人生は限られた時間、楽しんで生きましょう」と書くと、それをポジティブに受け取ってくれる方もいれば、全く逆に「そもそもどうやって楽しめばいいのか?その方法を書いてないから駄本」とネットで毒を吐く方もいます。
本はどうしても一つの書き方しかできませんが、会話はいくらでも表現を変えることができます。だからこそ、目の前にいる相手の成熟度に合わせて話をする、相手にわかる言葉、理解しやすい言葉で説明をする。これができると相手のストレスや相手とのトラブルが減り、自分との関係性もスムーズになります。
お釈迦さまの言葉「人を見て、法を説け」は、まさに至言。言葉選びは、気遣いです。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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