『百田百言』

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百田尚樹

《相手の剣の届くところに身を置かねば、自分の剣もまた届かない》
(影法師・講談社文庫)

『影法師』に登場する剣術の道場主の言葉である。誰だって真剣で戦うときは、傷を負わずに勝ちたいと思うだろう。しかし敵の剣が届かないところで、いくら剣を振り回しても、相手を斬ることはできない。相手を斬ろうと思えば、敵の剣の間合いに自ら入らなければならない。これはあらゆる勝負に言えることではないかと思う。

株でも競馬でも大きく勝とうと思えば、大きく張らないといけない。ビジネスも同様。人と同じことをやっていては、大きな失敗もしない代わりに、大成功もない。結局、自分が傷つくおそれが一つもない状況では、所詮、大きな勝利を得ることはできないということだ。これはビジネスや金儲けに限らない。人間関係や恋愛においても同じである。

相手の懐に深く飛び込んでこそ、本物の人間関係が築かれるし、恋も成就する。嫌われることを恐れてばかりいて、大事な一歩を踏み込めずにいては、何も生まれない。

《書評家という奴は、絶対に弾が飛んでこないシェルターから銃を撃っている》(夢を売る男・百田尚樹)より

我々はともすると、書評家や評論家になりやすい。灼熱のグランドで戦うサッカーや野球の選手たちを、空調の整った部屋のテレビで見ていて、批評したり、罵倒したりする。ビジネスも人生も同じだが、一歩を踏み出すという行動を起こさなければ何も生まれない。
グランドに一歩踏み出せば、失敗もあるかもしれないし、傷つくかもしれない。観客席に座って、ああだこうだと批判しているうちは、何の変化も起こせない。「相手の剣の届くところに身を置くこと」一歩を踏み出さなければ何も生まれない。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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