『困難にも感謝する』

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鍵山秀三郎

便宜主義で人生をよくした人を、見たことがない。便宜主義こそが、堕落の始まり。「まあ、これでいいか」というような生き方をしていて、いい人生が開けることはない。
たとえば、掃除道具を吊るす紐。たかが掃除道具の紐かもしれないが、この紐さえも私はないがしろにしない。最適と思われる紐を用意して、すべての道具に統一して着ける。
私がこれまで使用してきたのが、直径3ミリの「クレモナロープ:。材質はビニロンとポリエステエルの混紡(こんぼう)。このロープを25センチの長さに切断し、道具の通し穴に通したうえで両端をきつく結ぶ。結び目は、ほつれないようにライター等で軽くあぶっておく。こうしておくと、見た目にも美しく、よほどのことがない限りロープは外れない。
ロープの種類や長さがまちまちにつけられていたのでは、掃除の定着さえも望めない。

ところが、よく見かけるのが、書類の綴じ紐や電線、梱包用の紐等で代用している光景。ついていればいい、という便宜主義の代表例。
堕落は意外と、こうした便宜主義から始まる。最善の策に気づいたら、その場で変えておく。億劫がって、そのまま放置しない。手抜きをしない。見て見ぬふりをしない。堕落を食い止めるための、避けて通れない姿勢だ。

エンジンオイル、OEMの仲間の経営塾より

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