言葉を解き放つ文章

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 町屋良平

書くことで何かを閉じ込めてしまうことがある。そうした窮屈な文章は、対象を閉じ込めてしまってから書いている。先に書くべき対象をあらかじめ小さく知覚してしまい、その知覚でものを書いてしまう。そうすると書き手の主観で矮小な結論ありきの文章になってしまう。

物語の定型やご都合主義な展開などもこうした感覚に近い。これは恥の感覚に似ている。何が恥ずかしいのかは、あらかじめ自分を閉じ込めてしまっている。そこから知覚する何もかもが息苦しい。自分を息苦しく閉じ込めて、誰かに似ていることで安心してしまおうとする。孤独も、一人でいることと言うよりも、一人でいることを恥ずかしいと思ってしまうことになる。

対象を解き放つ文章とはどんなものか。どんどん新しい知覚に出会う余地と覚悟を持って、素直に驚いていくような心構えで書かれた文章だ。たとえば小説の登場人物がおおむね孤独で、まるで閉じ込められている窮屈さを感じるのに読んでいくと勇敢な気分に満たされてくる。そんな文章は言葉そのものが解き放たれている。

エンジンオイル、OEMの仲間の経営塾より

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