「PDCA」よりも「DA・DA・DA」でやれ

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藤原 和博

経営学において三つの経営資源は「人・物・金」だった。そこに「情報」と「時間」が加わり、五つの経営資源となったのは30年くらい前。最初に言い出したのはドラッカーだった。

今日のネット社会では、「スピード」こそ最大の経営資源としてとらえられている。いまや研修会などを行えば「どうやってPDCAを回すか」といった話になる。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)を経て、またPlanへと回す。このサイクルがとても重んじられている。

PlanとCheckは頭の中でもできるので、実際に体を動かすDoとActを、実行と改善、実行と改善というように繰り返したほうが速い。「DA・DA・DA(ダダダ)」の経営がスピーディーに実践できる企業が勝ち残る。

現代社会は既に20世紀の成長社会から21世紀の成熟社会へ突入している。「みんな一緒」から「それぞれ一人ひとり」の時代となり、ビジネスシステムも、ヒューマンリソースマネジメントも、個に焦点を合わせなければならない。昔ながらの正解主義の経営では、もう生き残れない。迅速に修正主義を実践しなければならない。

修正主義の例として、スターバックスの話を挙げる。今となっては全国どこでも同様の店舗を目にすることができるが、最初からそういう店ではなかった。当初、アメリカで生まれたばかりのスターバックスは、イタリアン・スタイルのコーヒーショップだった。店員は蝶ネクタイを締め、店に椅子は無く、イタリア・オペラの音楽が鳴り響くなか、客が葉巻を片手にエスプレッソをクイッと飲んで立ち去る。そういうイメージで店が作られていた。しかし、それでは客が集まらないので、何度も何度も改善された結果として、今日のような待ち合わせにもミーティングにも使いやすく、携帯やパソコンの電源まで取れるような店に変化し続けてきたわけだ。

最初から正解の姿が出来上がっていたわけではなく、修正主義の結果として今がある。物心ついたときに完成品を嫌というほど目にしてきた若者は、そこを勘違いやすい。携帯電話であっても、新幹線であっても、すべての商品は修正し続けた結果として、ようやくその形になった。

正解が出るまで100回の会議を積み重ねるといった感覚ではなく、まずは小さく始めてしまってから100回修正を続ける姿勢こそが、市場に受け入れられる商品にたどり着く王道だ。

今日一つ改善したら、明日もう一つ改善する。1年365日、毎日改善し続ければ、300以上の改善ができる。3年続ければ、1千カ所以上を良くすることができる。それだけ改善できれば、会社でも学校でも、商品だってサービスだって、良くならないわけがない。こういう感覚で改善の“癖”がつけば、どんなものでも付加価値が高まり、利益も自然と生まれることになる。

エジンオイル、OEMの仲間の経営塾より

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