「民主主義の内なる敵」

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 ツヴェタン・トドロフ

民主主義の本来的な構成要素が、分解して暴走してしまった。それが機能不全の原因だ。それは、人間の傲慢によるものだ。

古代のアウグスティヌスとペラギウスの神学論争に、既に現れている問題だ。人間は、自らの意志によって、つまり神の恩寵の助けなしに、善なる世界を作りだすことができるのか。

民主国家は、人権擁護と自由市場という高邁な目的の為に、戦争を含む、あらゆる手段を正当化してきた。それは、人間が自力でユートピアを建設できると信じる政治的メシアニズムに他ならない。

革命的な千年王国思想の後継者は、全体主義や共産主義だ。それらの醜悪な敵に勝利した民主主義は、今や同じ脅威を自己の中に抱え込んでしまった。その結果、人民はポピュリズムに乗っ取られ、自由は過剰に擁護されて他者を傷つける。進歩する事は、強制となった。

近代啓蒙の自律的な人間は、原罪などと言う古めかしい教義を信じない。だがそれは、人間の限界を知る本来的な保守思想の一部なのである。

エンジンオイル、OEMの仲間の勉強塾より

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