『アイリスオーヤマの経営理念 大山健太郎 私の履歴書』

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手持ちの現金がない人はノートに名前を書いてもらうだけで手渡す。代金は後に全額戻ってきた。気仙沼店では寒さの中を並ぶ客に暖房用の灯油を1人10リットルまで無料で配った。
まだ電話が通じておらず、本社と連絡が取れていない。居合わせたテレビの取材に店長はこう語ったそうだ。
「クビになるかもしれません。それでもいいんです」。
緊急時の対応マニュアルを持つ会社は多い。しかし本当の非常事態には役立たない。書類をめくる余裕はなく、起こることはたいてい想定外。肝心なのは、その企業の哲学が社員の体に入っているかどうかだ

夏に向け、節電は日本にとって大きなテーマになると思われた。LEDの照明器具は電力の消費量は小さいが蛍光灯などに比べると価格は高く、普及具合は今ひとつだった。
しかし節電のために、切り替える企業はきっと増える。4月にはLED照明の受注量が前年同月比で倍増し5月には3倍から5倍に跳ね上がった。生産ラインを増設していなければ対応できなかっただろう

原油価格は当面、上がり続ける──。皆がそう思い在庫を積み増したと知る。消費者のトイレットペーパー買いだめと同様、需要の先食いにすぎない。戦争勃発から2年、値上がりが一服した途端に商品がだぶつき始めたのだ。まもなく壮絶な値崩れが始まった

産業界向けのビジネスよりも消費者向けビジネスの方が好不況に左右されにくいことも分かってきた
帝国データバンクから日本企業140万社の経営データを購入、半年かけて丹念にチェックすると園芸用品の2社が目に留まった。地方企業で規模は小さいが売上高を伸ばしており利益率も高い「今後はベンダー機能も自社で持つ」。

私はあえて難しい道を選んだ。町工場以来の「できることは自前で手がけ、経験を社内に蓄積すべし」という姿勢にも合う。方針を決めたことで、小売店との取引拡大につながった作った物を売るのではなく、売れた物を迅速に作る

給与は高く、人件費は低く売上は努力で利益は知恵で決定する

当社がこれまでに変えてきた、収納、園芸、ペットの市場には、すべて「キーワード」がありました。収納では、「しまう収納から探す収納」がキーワードでした。しまう不便よりも探す不便の方が大きいという考えからクリア収納が生まれました。
「キーワード」がなければ、世の中を変えるような大きな需要創造をすることはできない著

著者は、東日本大震災の時、集まった社員にこう語ったそうです。「家族が心配だろう。しかし私たちの商品を出荷することが東北の復興になる。
企業には企業にしかできない役割がある。未来を見すえ、前に進むことだ。
人を出せないかわりに3億円を自治体に寄付する。皆は東北のために、ここにとどまって仕事をしてほしい」

大義を謳うこと。コンセプトを作ること。キーワードを作ること。

エンジンオイル、OEMの仲間の勉強塾より

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