『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』

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新井信昭

新潮社ビジネスが「アイデア×デジタル×インターネット」になる時代。
じつは怖いのは、ライバルの新規参入だったり、模倣だったりします。
にもかかわらず、日本のビジネスパーソンは
知的財産権(知財)に疎いのが現実。
ひとつ決断を間違えば、あっという間に競争優位を覆されるほどの
重要事項であるにもかかわらず、です。

われわれは特許というとすぐ、自分たちの発明や技術を守ってくれるものと考えがちですが、じつはその逆。特許を取ることで、むしろ情報は世界中に公開され、思わぬ競合を生み出すこともあるのです。

発端は、1990年あたりから、金型を必要とする日本の大手企業が、ノウハウのたくさん詰まった金型図面を下請けの金型企業に提出させ、これを中国などの外国企業に渡してしまったことにある
サントリーの緑茶飲料『伊右衛門』。みなさんは、この『伊右衛門』の作り方を誰でも簡単に見られることを知っていますか? それは、サントリーの「特許公報」に書かれているからです

これらの企業が強さを維持できている理由、それは「レシピを特許出願したりせず、完全に秘密にしているから」です
知財が気になって仕方なかった私は早速、『ポケモンGO』のホームページを見てみました。それによると、開発企業は米ナイアンティック社。先にも紹介した『特許公報』で、同社の特許を検索したところ、ある特許が見つかりました。
バーチャル世界にある、さまざまなバーチャル要素やバーチャル物体を捕まえることができることやそれらを現実の世界の地図上にリンクさせられること、などがその内容。
「なるほど、このアイデアをゲーム開発に利用したんだな」と、1人悦に入りました

「アイデアには国境がない」と同様に、認識していただきたいのが
「特許には国境がある」ということです。
特許は国ごとのもので、出願していない国ではまったく効力がありません。
日本で特許を出願して、特許を取れたとしても、その効力が全世界に及ぶわけではないのです。
そのため、山中伸弥教授は、実に30カ国以上に及ぶ国で特許を出願し、ヒトiPS細胞を守っているといいます

日本の特許出願の7割が、海外でのパクリOK
大赤字を出した2013年、パナソニックは、「日本国内で最も特許出願をした
企業」に輝いています

〇特許出願を見極める3つのポイント
1.その特許が現在または将来の自分のビジネスに役立つかどうか。
2.自分のアイデアをもとに作られた製品を見ただけで、他者がそのアイデアを真似できるかどうか。
3.自分のアイデアをパクった者が現れたとき、裁判で戦う覚悟と勇気と費用があるかどうか

「新規性のないアイデア」に与えられた特許は、本来与えられてはいけない「傷モノ特許」です。その傷があることが第三者に証明されると、その特許は「なかったもの」とされてしまうのです。これを「特許の無効」といいます

エンジンオイル、OEMの仲間の勉強塾より

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