「試行錯誤に漂う」

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 保坂和志

試行錯誤の意味は、何事かを試みては過ちを繰り返す事。多くの場合、試行錯誤を経て望ましい結果にたどり着く。

錯誤を伴う試行は、事の成就の為に必要な回り道である。保坂の解釈は違う。試行錯誤のまっただ中に留まること。結果に飛びつかずに、そこで漂い続けること。それこそが、人生を豊かにするのだ。

成就とか達成とか完成とかは無い。完成があるように思えたとしたら、それこそが過ちなのだ。ただひたすら淡々と考えること。考えながら書くこと。試行錯誤すること自体が一種の軌跡を可能にする。

表現や演奏が実行される前に、まず、その人がいる。その人は、体を持って存在する。その体は、向き不向きによっていろいろな表現の形式の試行錯誤をする。

試行錯誤には厚みがあって、開かれている。その厚みは、世界それ自体の厚みでもある。世界とは、驚くほど不完全にできている。いつまでも完成することはないと考えるんでんな。また、一つの人間の考えでは捉えきれない。説明がつかない。それほど、複雑なものなんですな。試行錯誤が終わることはない。

エンジンオイル、OEMの仲間の勉強塾より

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