『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』

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永井孝尚

・腕時計をする人は少ないのになぜ腕時計のCMは増えているのか?
・人はベンツを買った後どうしてベンツの広告を見てしまうのか
・女性の太った財布には、何が入っているのか

当時は「正確な時間を知ること」が時計をつける理由だったのである。でもいまやスマホや携帯で正確な時間はすぐわかる。だから腕時計をしない人が増えたわけだ
ジョギング専用ウォッチは「(時計で)体力を強化する」、登山専用ウォッチは「(時計で)安全に登山する」、そしてGPSソーラー腕時計は「(時計で)グローバルビジネスを成功させる」という価値を創造することで、お客さんがお金を出す「理由」を創り、新市場を生み出したのである

高い買い物をした後、広告が気になるのには、実は理由がある。「本当に買ってよかったのか?」高い買い物をした人ほど、内心、そんな不安を抱えているのだ「やっぱり買ってよかった」と不安が解消されたお客さんは、その後も継続して「顧客」になってくれる。
メルセデス・ベンツ社はこれが実にうまい。ベンツオーナーになるとその直後から、オーナーだけが見ることができる会員専用サイトが使えるようになる。ここでは自分の車の保守履歴やドライブ履歴が管理できる。それに加えて、オーナーだけが集まるコミュニティに入ることができる

宮崎のマンゴーは春から夏、一方の十勝のマンゴーは冬に出荷される。時期が違うので市場では競合しない。むしろ1年中マンゴーが食べられることでお客さんは増えて、マンゴーの需要も拡大する。このように他社商品が買われると、自分たちのお客さんもより高い価値を得る相手のことを、マーケティングでは補完的生産者と呼ぶ
十勝マンゴーは、一見すると新しい農作物の商品開発だが、実際には冬にマンゴーを食べるという顧客開発を実現している。商品開発の真の目的とは、商品を作ることではなく、商品を使うお客さんを創り出すことなのである
150円のプリンを買うとき、お客さんは「150円にしては美味しい」商品を買っている。一方、500円のプリンが提供するのは、「最高に美味しいプリンを食べる」という体験だ

「パンパンに膨れた女性の財布の中には、いったい何が入っているんだろう?」女性は安く買うことが大好きだ。そして安く買うことが大好きな女性は、クーポンも大好きだ。だからためたクーポンのために、財布が膨れていたのである。
しかしさらにリサーチしてみると、意外なことがわかった。そのクーポン券の実に6割が、残念なことに期限切れになっていたのである
これを使えるようにすれば消費を刺激でき、女性客がはなまるに来るきっかけづくりができるはず。そこであの「他店期限切れクーポン作戦」をはじめたのだ。このキャンペーンは大きな話題になった。なんと2億円の広告と同じ効果が生まれたのである。回収クーポンは12万枚、売上も3%増えた。大成功だった。
この社長は、その後、若くして親会社である吉野家の社長に大抜擢された

エンジンオイル、OEMの仲間の勉強塾より

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