『君は、どう生きるのか 心の持ち方で人生は変えられる』

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富士フイルムホールディングス会長、古森重隆
20代の若手社員のころ、忘れられない経験がある。印刷材料の営業担当だった
時のことだ。
当時は当社にも品質競争力の低い製品があり、市場で競合に売り負けていた。
ある大手の印刷会社に営業活動に行ったとき、その会社の技術系の常務から、「君の会社の印刷用製版フィルムは性能が良くない。
だからうちはコダックを使っているんだ」と
さんざんに批判されたことがあった。
当然、商談は成立しなかった。そのとき私は思った。
「開発部門や生産部門が良い製品を作ってくれないことには、
営業マンは勝負のしようがない。これではコダックに負けても仕方がない」と。
そんなある日、当時の平田九州男社長と話が出来る機会が訪れた。
社長とある会合で同席することになった時、若輩にもかかわらず私は、
平田社長に訴えた。
「我が部の製品はコダックに比べて明らかに劣っています。
なかなか勝てません。
研究所や工場の人間に、もっと製品の品質を上げるように
社長から言っていただけませんか」
すると社長は、「分かった。それは研究所や工場の人間に言っておこう」と
答えたあと、こうつけ加えた。
「ただ、君はそのために何をしたのかね?」ハッとさせられるひと言だった。
社長の問いに対して、私は何も答えることが出来なかった。
私は、自分の立場で何が出来るのか突き詰める前に、
「製品が悪い」「研究所や工場の人間が悪い」と、人のせいにしていたからだ。
そんな私の姿勢を、ずばりと突いたひと言だった。
私はこのとき、オーナーシップとは何かが、本当の意味でわかった。
製品が売れないときに、「工場が悪い」「品質が悪い」と文句を言うのは
簡単だ。しかし文句を言ったところで、状況は何も変わらない。
それなら状況を変えるべく、自ら動けばいいのだ。誰が悪いのではなく、
自分がそれを解決する努力をしないのが悪いのだ。
お客さまが会社の製品のどこに不満を抱いているのかを
いちばん知っているのは、現場で働いている営業マンである。
そこで営業マンは、研究所や工場の技術者に営業現場の状況をしっかりと伝え、
「私もお客さまからニーズを聞き出してくるから、
ぜひお客さまに満足していただける製品を一緒に作っていこう」と、
彼らに訴えかけることが大事になる。
また技術者にも営業の現場に同行してもらい、
お客さまの声を直に聞いてもらう機会を作ることも重要だろう。
先程の印刷会社の技術常務のところに、すぐ技術者を連れていった。
常務からこてんぱんに批判された技術者は、人材を集め、
それから改良に本腰を入れるようになった。
出来ることは、たくさんあるはずなのだ。
つまり製品が売れなかったのは、
「製品が悪い」からだけでも
「研究所や工場の人間が悪い」からだけでもなかった。
自分の立場で出来ることを考え抜けば、私自身にやるべきことがあったのだ。
社長のひと言で、私はそのことに気づいたのである。

エンジンオイル、OEM、アルコール、除菌剤にも必要ですね。
肝に銘じなければ・・

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