疲れのもとは脳にある

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梶本修身、東京疲労・睡眠クリニック院長

疲労と言うと体の疲れと思いがちだ。
ところが、家事や運動などによる肉体的疲労も、
スマートフォンなどによる眼精疲労も、
ストレスによる心的疲労も、
疲れたと感じるセンサーのもとは脳にある。

運動をすると心拍や呼吸が早くなり、
血圧や体温が上がり、汗が出てくる。
こうした、心拍や呼吸、血圧、体温などの変化を
秒単位で調整しているのが脳にある自律神経の中枢だ。

つまり、運動中、フル活動で働いている自律神経を
コントロールしている脳の中枢には
負担がかかり続けている。
そこで、これ以上運動を続けると
身体が危険な状態になる時、
脳は疲労感というSOSを出して休息を促す。

疲労が生じても、脳が休まれば、一過性の疲れですむが、
脳の疲労が取れないと自律神経の調整力も低下してしまう。

自律神経は、心身の活動を司る交感神経と
休息を司る副交感神経がバランスよく無働くことが大切だ。
自律神経の調整能力が低下すると
交感神経と副交感神経のトータルパワーも弱まり、
活動レベルも休息レベルも落ちてしまう。

車に例えれば、アクセルもブレーキも利きにくい状態だ。
自律神経のトータルパワーが低下すれば、
全身の機能が衰え、老化が進みやすくなる。

眠らなければ疲労は回復しない。
一番大事なのが十分な睡眠だ。
睡眠は疲労を回復させる唯一の手段。
1日6時間以上は必要だ。

大切なのは、睡眠の質。
睡眠の質が悪ければ、たとえ7~8時間
寝ていたとしても、脳の疲れは取れない。
その一つが、いびきだ。

いびきは気道を狭めて呼吸の邪魔をする。
脳に酸素が十分供給できなくなるため、
自律神経は心拍を速くし、
血圧をあげて酸素の供給量を維持しようと頑張る。

これでは、眠りながら走っているようなもの。
疲れは取れないばかりか、蓄積するばかり。
日中も疲れやすくなり、
さらに脳の疲労が蓄積するという
悪循環に陥ってしまう。

適度な運動は大切だが、
疲れている時に、リフレッシュしようと、
激しい運動で汗を流したり、
熱いシャワーを浴びたりしてはいけない。
いずれも、フル活動してヘトヘトの自律神経に
過度の負担を更にかけている。
だから、脳の疲労を更に増大してしまう。

疲れた時ほど疲れを重ねないように注意して、
1日のトータルの疲れをなるべく少なくする。

1日のトータルの疲れを少なくするには、
昼夜の2つのルールが大切だ。

昼のルールは、疲れたら無理せず休むこと。
あれもこれもやろうとしないで、
明日でもいいことは明日に回し、
疲れた時は無理せず休もう。
動き過ぎも休み過ぎも疲れる。
メリハリのある生活をしよう。

自然には、脳の疲れを癒す力があるので、
緑のある近所の公園などを散歩するのもお勧め。
適度な運動にもなり、疲労回復効果も期待できる。

夜のルールは、質の良い睡眠をとること。
熟眠できる睡眠環境を整え、
寝るときの姿勢を見直すことで
自律神経の調整力が回復し、
気持ちよく朝を迎えれるようになる。

質の良い睡眠をとるためには、
寝室の温度は、夏は25~27℃、冬は18~22℃、
湿度は50~60%が目安。

横向きに寝ること。
横向きに寝ると気道がふさがりにくいので、
呼吸が楽になり、いびきの予防にも効果的だ。

いびきに注意する。
いびきをかくと、その間は呼吸ができず、
睡眠の質が悪くなり疲れも取れない。

疲労感の無い隠れ疲労もある。

やりがいのある仕事は、疲労感よりも達成感が大きい。
良い結果が出ると、疲れも吹き飛ぶ。
仕事や遊びに夢中になると、長時間続けても疲れを感じない。

他の動物は疲れるとすぐに休むが、
脳の発達した人間は、達成感や充実感があると
疲れを感じにくくなる。
これは隠れ疲労と呼ばれており、
自覚がないだけに蓄積しやすい。
楽しい時ほど、無理をしないよう心がける。

エンジンオイルのOEMも、楽しくて隠れ疲労が貯まるほど
楽しいものにしなくてはいけないな。

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