木全 賢
★中小企業のB2C商品の価格はどう決めるのか?
中小企業が新規開発するB2C商品の価格について
考えてみます。
以前の記事、「アップルもダイソンも
『高性能・高価格・高利益率』で大きくなった」では、
自社開発商品の販売価格に注目して
「ネット直販で販売価格1~2万円」が理想だと
お伝えしました。
もちろん、これが唯一の方法ではありません。
ネット直販以外の販売方法もありますし、
低価格で売ったほうが良い商品もあります。
ただし、B2Bの中小メーカーが次のような状況ならば、
「ネット直販で販売価格1~2万円」を
開発目標に掲げるべきだと考えています。
・現状のB2Bビジネスだけでは先行きが見えず、
新規事業を検討している。
・担当者一人の空いた時間で新規事業を始めざるを得ない。
・初年度から利益を確保しながら
新規事業を継続させるしかない。
・新商品を一つ開発したら、
数年~10数年売り続けざるを得ない。
・新規事業で利益が出ない限り、次期商品を開発できない。
経験上、B2C商品開発を検討しているB2Bの中小メーカーの
多くは、このような状況にあると感じています。
★価格より利益率
「商品開発で狙うべきは価格1~2万円、
簡単に真似できない趣味製品」でお伝えしたように、
販売価格1~2万円を勧めるのは
高い利益率を確保するためです。
利益率が高くなければ、初年度から利益を確保しながら
新規事業を継続することはできません。
それに、商品を1個売って1万円近い粗利が得られるなら、
担当者のモチベーションが下がることもないでしょう。
モチベーション維持も事業継続の大切なポイントです。
ただ、1~2万円にこだわる必要はありません。
新規事業を継続できる利益の確保が目的ですから、
5000円でも20万円でも、
計画した利益が見込める販売価格に設定することが大切です。
実際、アップルやダイソンは創業当初から
そのようにしてきました。
★ネット直販で価格決定権を握る
そして高利益率とセットで考えなければならないのが
価格決定権です。
大手家電メーカーが苦境にあえいでいるのは、
量販店に価格決定権を握られ、
利益を確保できないことが大きな理由です。
ネット直販の最大のメリットは、
ユーザーに直接販売するため、
メーカーが価格決定権を持つことができる点にあります。
販売価格をコントロールできれば、利益率を維持できます。
高利益率は価格決定権の維持とセットで考えないと、
一つの商品を10年売り続けることはできません。
そんなことはアップルやダイソンだからできたのだと
思われるかもしれません。
もちろん、そのような価格設定ができたのは、
それらの商品が価格に相応しい性能とコンセプトとデザインを備えていたからですが、
中小企業でも価格決定権を握ることはできるのです。
以下、ほかの中小企業の事例もご紹介しましょう。
★家電ブランド「アマダナ」の手法
2003年に家電ブランド「アマダナ」を立ち上げた
アマダナ株式会社
(旧:株式会社リアル・フリート)は創立当初、
社員6人の小さなベンチャー企業でしたが、
ネット直販だけで10万人近い顧客を獲得し、
同じ商品を5~10年のあいだ、
同一価格で販売しています。
初代社長の田部井雅基氏は元東芝社員で、
どんなに良い商品を開発しても
量販店に価格決定権を握られて利益を確保できない
家電流通に疑問を感じ、
「市場の1%のユーザーに100%の満足感を与える
デザイン家電ブランド」として
「アマダナ」を立ち上げました。
市場調査を一切行わず、すべての商品デザインを
たった一人のデザイナー(鄭秀和氏)に任せ、
そのデザインを気に入った一握りのユーザーだけに
ネット直販するという
ビジネスモデルを構築しました。
家電流通を介さないネット直販だったため、
価格決定権を保持できたのです。
ネット直販には、価格以外のメリットもありました。
アマダナのユーザーになってくれた顧客の情報を
得ることができ、
10万人を超えるユーザーに新商品発売の案内を
発信するだけで、
初回ロットが完売したそうです。
もちろん、その価格は初回ロット完売で初期投資を回収して
利益が出る設定になっていました。
例えば創業当初から販売されている電卓は、
発売から10年以上経ちますが、
ほとんど同一デザインのまま高価格を維持しています。
電卓なんて100円ショップでも売っています。
それでも、電卓を10年以上高価格のまま
売ることができること。
すなわち価格決定権を持つことができることを
アマダナの事例は教えてくれます。
そしてアマダナの商品も以前お伝えした、
次の3つの要素を満たしています。
・高利益率を確保できるネット直販で
販売価格1~2万円の商品
・プロ寄りの高品質な趣味製品
・自社技術を応用した、製造にあたって
初期投資や手間のかかるもの
もちろん誰にでもできることではありませんが、
アマダナの事例は中小企業のB2C事業にとって、
とても参考になります。
エンジンオイルのOEMでも、価格決定は大切です。
これを参考にしたいと思います。