『第三世代の経営力』

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横田尚哉


「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。
唯一生き残るのは、変化に適合できる種たちである」
これは、チャールズ・ダーウィン氏の言葉です。

生物界では、生き残る=弱肉強食ではないということです。
その環境に適合できるように進化したものたちが、生き残っていくのです。
企業にとって、利益を上げることも大切ですが、
それ以上に生き残ることも大切です。
生き残ることができないと、利益を上げ続けることはできません。

時代は常に変化しています。 経済の変化、消費者の変化、
テクノロジーの変化です。
その変化が、これまでの手段を窮屈なものにし始めた時、
進化の必要性が生まれるのです。

ポラロイドカメラは、1937年に科学者であった
エドウィン・ハーバード・ランド氏が創立しました。
撮影に関するいろいろな製品を生み出していました。
その後、「撮影した写真をその場で見たい」という要求に応え、
1947年にその技術を開発し、公表しました。
そして、1965年に発売を開始した「ポラロイド・スウィンガー・カメラ」が
大ヒットし、インスタントカメラの代名詞となる地位を築きました。
まさに、時代の環境に適合することに成功したのです。

当時、写真フィルムの老舗メーカーの「コダック」はさぞ、
脅威に感じたことでしょう。
ポラロイドは、方向性をもって積極的な進化をしたから、
繁栄できたのだと言えます。

しかし、1988年には、デジタルカメラが商品として
一般販売されるようになり、その市場と技術は一気に加速しました。
1995年には、デジタルカメラでヒット商品が生まれ、
時代はデジタルカメラに移行しました。
そして、とうとうデジタルカメラ市場の波に乗りきれず、
2001年にポラロイドは経営破綻したのです。

生物であれ、企業であれ、進化できたものが生存し続け、
進化できなかったものが途絶えていくのです。
たとえ、その時代に一番強いものであったとしても、
次の時代には退場せざるを得ないでしょう。
いくら頑張っても、この原理は、変わりません。

経済産業省の資料をもとに計算してみますと、
企業の平均寿命は、10.7歳となりました。
設立して5年以上存在している企業は41.8%、10年以上だと26.1%、
20年で11.1%、50年以上に至っては0.9%です。
つまり、設立時のビジネスモデルを進化させることのできなかった企業が
どれほど多いかということです。
どれほど素晴らしいタイミングで設立したとしても、
3年たてば環境も変化し始めるということです。
企業の経営者は、ビジネス環境が設立時から変わっていることに気づいたか、
気づいた時に進化させることができたかです。

デジタルカメラを世界で最初に開発し、
「フィルムの巨人」として君臨していたコダックが2012年に経営破綻した。
片や、富士フィルムは、売上の6割、利益の3分の2を占めていた
カラーフィルムを捨て、医療や化粧品、情報など、
「総合ヘルスケア企業」に生まれ変わり、
2015年3月期の最終利益は46.4%増の1185億円と、過去最高となった。

2006年4月に開所した富士フィルム先進研究所には、一つのシンボルがある。
それが、「ミネルバ」という女神と梟(ふくろう)だ。
「哲学者ヘーゲルは『法の哲学』の序文で、
『ミネルバの梟は黄昏(たそがれ)に飛び立つ』という
有名な言葉を記している。
ローマ神話の女神ミネルバは、技術や戦の神であり、
知性の擬人化と見なされた。
梟はこの女神の聖鳥である。

一つの文明、一つの時代が終わるとき、ミネルバは梟を飛ばした。
それまでの時代がどういう世界であったのか、
どうして終わってしまったのか、
梟の大きな目で見させて総括させたのだ。
そして、その時代はこういう時代だったから、
次の時代はこういうふうに備えよう、と考えた」
進化しなければ、生物も企業も生き残れない。

エンジンオイルのOEMも進化させまっせ。

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