鈴木 喬:エステー取締役会議長兼代表執行役会長(CEO)

エステーが製造・販売している

生活日用品の商品開発の胆は、

「聞いてわかる」「見てわかる」「使ってわかる」の3つだ。

それが僕の信念だ。

特に大事なのは「効き目が目で見てわかる」ことだ。

その象徴が冷蔵庫の脱臭剤の「脱臭炭」だろう。

脱臭炭は、技術者に「脱臭効果の高い炭で

一番良いものはなんだ」と聞いたら

「紀州の備長炭です」と言うから、

「それをつくれ」と命じた。

使っているうちに、だんだん水分が気化して炭の形になる。

そして最後にカラン、コロンと炭の音がする。

それまでの脱臭剤はヤシガラの活性炭であったり、

ベーキングパウダー、簡単に言えば重曹が主力だった。

これらは使っても何の変化もない。

でも「脱臭炭」は、ゼリー状の炭が減っていき

「使い切ったな」という満足感がある。

5~6ヵ月すると取り換え時期が来るのが分かる。

そうするとお客様は、買い換えなくちゃと思う。

こうして買い続けてもらえる。

こういう「無限循環運動」がいい。

エステーの商品は、単純平均すればメーカー出し値が

200円くらいのものだ。

そうすると効能といっても、

宇宙ロケットをぶっ放すようなものとは違い、

重要なのは心理的な満足感だ。

だからお客様に、いかに「おぉ、効いたぞ」という

心理的な満足感を感じてもらえるかが商品開発の胆になる。

除湿剤の「ドライペット」は、

どんどん水が貯まっていくのが見える。

それで、お客様は病みつきになる。

冬になると、「なんで貯まらないんだ」と

お客様が真顔でクレームを寄せてくる。

「お宅の製品は効かないね」とまで言う。

「いえお客様、冬は乾燥しますので」と説明すると、

「あっ、そうか」と納得してもらえる。

それほどお客様の心理的満足感を上げる商品開発に注力する。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より