小林正観

話の本題が終わって雑談になったとき、

私は中学・高校の先生方に、こんなことを言いました。

「自分が中学生や高校生だったときに思ったことですが、

方程式や単語を、生徒に教えることも

もちろん大切だったのでしょうが、

先生からは、『なぜ数学という学問はおもしろいのか』

『どうして英語というものに興味を持ったのか』

『なぜ美術に惚(ほ)れたのか』という話を

本当は聞きたかったのです。

『この学問は、こんなにおもしろいところがある』

『こんなに学問というものはおもしろい』という話を

してほしかったのです」と言いました。

私は、その先生方に「教育を考えるときに、

モチベーション

(動機づけること、やる気にさせること)ということを、

大きく取り入れていただきたい」とお願いしました。

例えば、数学の先生や英語の先生をしている人、

あるいは美術の先生をしている人、というのは、

その学問が嫌いであったはずはありません。

それが好きであったからこそ、その教師になったはずなのです。

そうであるならば、「なぜその学問が好きになったのか」

「どんなおもしろさや深さがあるのか」を話すことによって、

生徒にモチベート(動機づけ)できるかもしれません。

生徒に向かって、「なぜ勉強しないのだ」

「なぜわからないのだ」というような、

鋭い言葉を浴びせるよりも、

その生徒をやる気にさせる、「なぜその学問が楽しいのか」

ということを伝えていくことが、

教育の大事な側面であるように思います。

人間の教育の中で、先生が与えるモチベート

(やる気にさせる、動機づけすること)というのは、

私たちが考えている以上に、大きな問題なのかもしれません。

■この人を「やる気にさせる、動機づけする」ということは、

何も学校教育だけのテーマではない。

企業においても、これは同じだ。

特に、中小企業や商店において、

この「楽しさ」を伝えることは大事だ。

自分の子息がいるにも関わらず、

多くは都会に行ったり、役所や大企業に勤めてしまい、

帰ってこない、継がない、というケースは多い。

もちろん、給料の問題はあるが

(中小企業より大企業の方が総じて高い)、

その根本には親が仕事の楽しさを伝えてこなかった、

ということが多い。

また後継者問題だけでなく、親や大人の世代が、

楽しそうに、面白がって、カッコよく仕事をしたり、

勉強したりする姿を見せるのは大事だ。

子どもは、そんな大人を見てあこがれる。

つまり、理屈ではなく、行動で示すということ。

人をやる気にさせるには…

「楽しさ」を伝えることはとても大事だ。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より