脱・小林一三

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日本で私鉄経営のビジネスモデルを打ち立てたのは、
阪急電鉄を創業した小林一三だ。

オフィス街にターミナル駅と百貨店。
郊外に娯楽施設を配し、
その間に、住宅地を造成する。

通勤、買い物、行楽に、自社の鉄道を使ってもらう。

職住遊の分離と均質な住宅街を柱とする
一三モデルは、核家族を主役とする
大衆消費社会には効率が良かった。

しかし、団塊世代の引退と少子化で賞味期限切れだ。
通勤客は減り、遊園地で遊ぶ子供はいない。
高齢化で、住宅街の空家も増えている。

脱・一三型の成長を求め
私鉄各社の挑戦が相次いでいる。
鍵は、混在と交流だ。

東急は二子玉川の再開発地区に、
起業家向けの交流施設を開設。
他の街では、古い集合住宅を改造し、
一人親が共同で子育てをするシェアハウスなどの
運営に乗り出している。

小田急電鉄
「もう新たに住宅地を開発する時代ではない。
地域の個性に合わせ、小ぶりでも顔となる施設を作り、
町の価値を高める。」
第1弾は、渋谷区の代々木上原だ。
駅前に、店、住居、オフィスが入る施設を開業した。
4階建てと、小ぶりながら、テーマを「食」で統一。
オフィスは大きな厨房を備え、
店は沿線の農家から食材を取り寄せ、
料理を提供する。
個性的な飲食店が集まりつつある
代々木上原の顔を目指す。

京王電鉄は、井の頭線の駅に直結するSOHO
(自宅兼オフィス)型の賃貸住宅を開設した。
並行して本社に「沿線価値創造部」を新設。
高齢者向け移動販売など、
ソーシャルビジネスにも取り組む。

家族の形や働き方が変わり、
新たな生活者のニーズが生まれる。
各社のきめ細かい試みから、
日本社会の変容が透けて見えてくる。

 

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