『さよなら、インターネット』

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武邑光裕

昔は、「お茶や水にお金を払うなんて」とみんなが思っていましたが、今ではみんなが普通にお茶や水にお金を払っています。社会の常識は変わるものです。同様のことは、プライバシーに関しても言えます。

かつてインターネットが普及し始めた頃、人々がプライバシーを手放すなんて、考えられませんでした。でも今は、「無料通話」や「無料メッセージ」に惹かれて、みんながプライバシーを手放しています。
IT企業は個人データを使って広告に生かし、さまざまなマーケティングを仕掛けています。しかしながら、最近ではこの行き過ぎた状況に水を差す兆候が出ており、なかでもEUが定めたGDPR(一般データ保護規則)は、強烈です。個人情報を搾取するシリコンバレーに対抗してEUが突きつけたもので、今後のIT企業の行動を著しく制限する可能性があります。

フェイスブック有料化で一番困るのはアドテック企業であり、広告主である。「プライバシーの死」がターゲット広告という奇跡を生み出した。いま、プライバシー保護は、「広告の死」と対峙している

日本はEUからデータ保護に関する「十分性認定」を受けていないため、データ保護に関しては米国と同様、世界の無法地帯とみなされている。
日本の改正個人情報保護法も、GDPRから見れば10年遅れの法律である。GDPR違反の制裁金は巨額だ。ひとつの会社で26億円規模の罰金、あるいは連結決算の4パーセントを課せられるケースもある

EU議会に所属するベルギー社会党のマーク・タラベラ議員は、GDPR違反の疑いがあるとして、「ポケモンGO」の調査を正式に議会に要請した。
ゲーマーのデバイスにクッキーとトラッカーを保存し、ユーザーの明確な同意なしにそれらのデータを抽出して解析することが可能なら、このアプリは、EUのeプライバシー指令にも違反する可能性がある

GDPRの重要な規制
1.「忘れられる権利」
2.データへのアクセスの容易性
3.データがいつハッキングされたかを知る権利
4.デザインによるデータ保護のデフォルト

商業的有用性を免れたわたしたちの個人生活はどこにあるのか?
それが現代のプライバシーをめぐる課題である。個人データのデジタル化は、人間生活の商業的利用を容易にし、拡張し、加速する。それは、わたしたちがデータ商品となり、現代の経済活動に不可欠な資源であることを示している。

今日、これを新たな「搾取」と呼ぶなら、それに抵抗するための新しい生活様式を開発する必要がある
ユーザーがアカウントを作成すると、フェイスブックはウェブブラウザに「トラッキングクッキー」を挿入し、あなたが訪れる各ウェブサイトを追跡できるようになる。これは、あなたのフェイスブックでの活動とは関係なく、あなたがウェブをブラウズするだけで、あなたが訪れるサイトをフェイスブックが知っていることを意味する

贈与や蕩尽より、生産と蓄財を重視する社会が形づくられ、社会に累積したエネルギーの消尽行為そのものが、社会から忌避され、呪われていった。「余剰」の「蕩尽」を実施する宗教祭儀によって支えられていた共同体は、富の「蓄積」と「投資」をめざす個人主義と資本主義経済に邁進する

「かつてプライバシーなんてなかった」というのは、インターネットビジネスの人間がよく言うことですが、このままIT企業にデータを渡し続ける人生でいいのか、疑問に思ってきます。(LINEなんて恋人同士の会話を全部記録しているんでしょうし)
また、現在のわれわれの社会の根底にある考え方が本当に正しいか、問い直す良いきっかけにもなります。

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