・小惑星探査機「はやぶさ」をはじめ長年宇宙開発に携わってきた川口淳一郎
・大学教授の傍ら幅広いジャンルの書物を世に送り続ける齋藤孝
・人間そっくりのアンドロイド研究開発の第一人者である石黒浩氏

●石黒
呼吸と閃きは、やはり関係があるのですか。
●齋藤
はい。呼吸はいろいろなパターンがありますが、一つには沈思黙考して自分の中で深く集中していく呼吸、それから人の話に息を合わせてお互いに刺激を受け合う呼吸があります。
訓練としては、呼吸に集中しながら長く緩く吐く時間を徐々に延ばしていくというやり方が一つ、もう一つは体を柔らかくして相手に即応したテンポのいい呼吸を身につけることです。
呼吸は沈静してしまうと他者に反応できなくなりますし、逆に他者に反応してばかりだと沈静できません。閃きというのは、この二つの要素のバランスが取れた時に生まれるのだと考えています。
●川口
僕は水泳が好きなのですが、適度の運動をしている時にふっとアイデアが生まれることがあるんですね。呼吸も運動もそうでしょうが、吸う吐く、強める弱めるといった緊張と弛緩の繰り返しですよね。アイデアは一見全く思いがけない時に生まれると思っていましたが、よく考えていくと緊張と弛緩のバランスが取れている時に生まれているような気がします。
●石黒
そうですね。僕自身も風呂上がりに髪を乾かしている時などに、よく右脳と左脳が繋がったような感覚になって解決策が浮かぶのですが、張り詰めた仕事を終えた後の弛緩の時間に閃きが生まれるのかと考えると興味深いですね。それから、物を磨き続けるとか、単純作業を続けている時にもやはりいい閃きが生まれます。
●川口
偶然の出会いを幸運に変えるという意味のセレンディピティという言葉があるんです。物を磨くとか一見何の関係のないようなことがきっかけとなって、そこから解決のヒントを得ることはありますね。
●石黒
僕はそうやって生まれたアイデアは忘れないうちにメモを取ったり、メールでスタッフに伝えたりしています。頭に浮かんだことを瞬間的に文章や絵にして整理していくことも閃きを掴む上での僕の習慣です。
実際、アイデアに長けたUSBメモリーやイオンドライヤーの発明者はひたすら絵を描き続けています。視覚でイメージしていくことは、それくらい効果が大きいのだと思うんです。
●齋藤
アイデアはトビウオみたいにすぐに潜ってしまいますから、メモはとても大事ですね。私は映画館でいろんな発想が浮かぶことが多くて、真っ暗な中で思わずメモを取ってしまう(笑)。それに石黒さんがおっしゃったアイデアをすぐに誰かに伝えるのも気づきの精度を高める上で、とても意味のあることだと思います。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より