『営業はいらない』三戸政和

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10年後には営業という概念がなくなっている。

大量生産、大量消費を煽ってきたビジネスモデルから、
「本当に必要なモノやサービス」だけが生き残る時代に
移行するからだ。

「本当に必要なモノやサービス」へのアクセスは、
今は凄く容易になった。
Googleの検索窓に文字を打ち込めば、
ものの数分で情報にたどり着き、
自宅にいながらにしてモノが購入できる。

AI時代に入れば、
インターネットに埋もれる膨大なモノや情報の中から
「自分に必要であろう」情報が自動的に送られてくる。

「(資本主義社会の中で)今後生き残っていくの
が難しくなるだろう人種がいる。
それは単にモノを右から左に移動させることで
利益を得てきた人、
会社から与えられた商品を、額に汗をかいて販売している
日本の多くの営業マン」だ。

営業マンを多く抱えるJTBは「2022年までに
従業員数を自然減と採用抑制で2000人程度
(現在の総数の7%程度)減らす」方針を発表している。

それ以外の変化の兆候について列挙してみる。

1. AmazonによってBtoCにもたらされた大変革は、
BtoBの現場でも起きはじめている。

2. 医療業界では、営業の代名詞と言える
MR(医薬情報担当者)を代替するサービスが
すでに浸透している。

3. フィンティックが銀行業界を脅かしているように、
あらゆる営業の分野で、
セールステック(営業支援ツール)の存在感が
ますます大きくなっている。

これらの事から浮かび上がるのが、
もはや「営業はいらない」という現実だ。

10年後にはこの社会から営業という概念がなくなっている。
変化はすでに忍び寄っている。

気づいたときには世界はもう変わっていた、
という事にならないよう、
営業マンたちよ、刮目せよ。

15年にわたってテック業界を見てきた
ベンチャーキャピタリストの私としては、
テクノロジーが人の想像をはるかに超えて
進化することを体感している。

私がベンチャーキャピタリストになった15年前は、
まだiPhoneの姿形もなく、
日本にFacebookも存在しない時代だった。

この時代には、
サイズのパターンが多く、試着が必要な「服飾」は、
ネットで売れないと言われていた。
しかし実物を手に取らないと売れないとされていた服飾も、
その後、アパレルECのzozotownが、
テクノロジーを使ってそれが可能であることを実証した。

iPhoneが日本に上陸した2008年には、
日本経済の水先案内人であった大前研一氏が、
「日本でiPhoneは流行らない」と断言していた。
当時はガラパゴス携帯のネット通信や
ポータブルミュージックなどの機能が充実していたし、
ワンセグや着うた・着メロなど日本独特の機能が
よく使われていたからだ。

Facebookが上陸したときも、
「日本人は実名で何かを発言することは不得手だから、
実名制のSNSは使われない」と言われていた。

しかしそんな批評や疑念が、10年経った今、
まったく間違っていたことは誰もが知るところだ。

こうしたテクノロジーの進化を先読みするセンスは
すぐに備わるものではない。

私たちベンチャーキャピタリストは、
とてつもなく僅少な情報で軌道を想像し、
判断できるよう日々訓練している。

今、芽吹こうとしていくつかのテクノロジーから
将来を予測するのが、
我々ベンチャーキャピタリストの仕事であるが、
これまで1000社以上のベンチャー企業を見てきた
鍛錬の結果、「営業はテクノロジーに置き換えらえる」
と確信している。

近年、営業という概念を脅かすセールステックの
ベンチャー企業がさまざまなツールを世に生み出している。

それらの動向を認識し、
テクノロジーの進化の先を想像すれば
「営業はいらない」ことをあなたも理解できるだろう。

エンジンオイルのOEMも、営業戦略は同じ方向を向いています。
しかし、テクノロジー、Eコマースは万能ではありません。

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