井出明
戦争や災害、公害、そして犯罪。
近代における影の現場を実際に訪れ、
ダークツーリズムとは、
そのような旅を通して思索を深め
近代社会の矛盾や構造を捉えなおす方法だ。
各々の場所に刻まれた負の記憶に
あえて近づく。
そして個別の事象から照らし出される
近代の普遍的な課題を今に結び付けていく。
どんな取材でも、現場を訪れると
場そのものが語りかけてくる何かがあるものだ。
その声に耳を澄ませると、
目の前の何でもない風景が途端に意味を帯びてくる。
何を考えるかではなく、
どこで考えるかが
物事を理解する上でいかに重要か教えられる。
ダークツーリズムを内的なイノベーションが生じるような
意味ある旅にするためには、
受け手の側が日ごろから観光する力を
鍛えておく必要がある。
そうすればこそ、人は旅の中で歴史に対する
当事者性を意識し、
自らもその一部であることを感じ取れる筈だ。
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