「最も非生産的で、最も問題が解決しない考え方」

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元・ゴールドラット・コンサルティング日本代表の岸良裕司

(岸良氏の京セラ在籍時)
稲盛和夫さんは「私にもできるのだから皆にもできる」
と常日頃語っていた。
だが、僕は新入社員の頃、自分が稲盛さんのような
凄い人になれるとは到底思えなかった。

でもある時、稲盛さんのような偉大な人が
存在しているからには、
必ず何かの理由があるはずだと考えるようになった。
要するに「あの人だからできる」という考え方を
やめたのである。
「あの人だからできる」と定義すると、
学びがそこで止まってしまうからだ。

大好きだった京セラを飛び出したのは43歳。
現在様々な赤字企業や問題を抱えた組織の
経営コンサルティングをさせてもらっている。
相談の中身はそれぞれに異なるが、
何か問題があって、ずっと解決しない時には
必ず一つの共通した症状がある。
それは”人のせいにする”ということだ。

「あそこの会社は力があるから」「うちには人材がいないから」といったように
「○○のせいだ」という言葉が必ずどこかに出ている。

いつも僕は同じ質問をする。
「人のせいにして問題は解決しますか」
世界中の誰に尋ねても「しない」と口を揃えて答える。
にもかかわらず、我われは人のせいにしがちで、
その結果、問題を放置してしまう。

見方を変えれば、その症状があったとしたら、
そこに改善のチャンスがあるということだ。

稲盛さんは講話の中で「宇宙は常に進化発展している。
そこに心を委ねるならば、
京セラも未来永劫発展する」と我われに語られた。

僕も曲がりなりに50年以上の人生を生きてきて、
確かにそうではないかと思う。
世の中はよき方向へ向かっている。
それなのに、その妨げになるものがあるとすれば、
それは我われの持つ、
最も非生産的で問題が解決しない考え方
「人のせいにする」ということではないだろうか。

かつての僕がそうだったように、
自分の思うような仕事や部署に就けず、
悶々としている人は少なくないだろう。

だが仕事というものは「自分がいたら助かる」という
部分を見つけるところから始まるのだと思う。
そしてそれは必ず見つけられる。
職場には必ず困っていることがあるからだ。
会社が自分を雇ってくれた理由とは何か。
それを自らに問うところにきっと新しい扉が開かれている。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『心をつかむ技術』

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カート・モーテンセン

自負心とは、人々から尊敬されることを求め、認められたいと思う気持ちのことだ。すべての人の心の奥底に、自分は重要な人間であり、他人に認められたいという欲求が秘められている。
自負心は非論理的で破壊的な行動をとらせる一方で、高貴で勇敢な行動をとらせる。
自負心が満たされないとき、人々はいかなる方法を使ってでもそれを満たそうとする。したがって、人々の満たされていない自負心を満たすのを助ければ、大きな説得力を持つことができる。
人々は自負心をいつも満たしてほしいと思っている。だから、自分の価値を認めてもらい、大切にされていることを確認したがるものだ。心理学者のJ・C・スタール博士は多くの調査を分析し、組織に勤める人たちの不満の主な原因が上司の態度にあることを発見した。

それを重要度の順にリストアップしよう。
●アイデアや提案をしても功績を認めてくれない
●問題の改善を申し出ても実行してもらえない
●励ましてくれない
●意見を言わせてもらえない
●作業の進捗状況を知らせてくれない
●えこひいきをする
以上の原因はすべて、自負心を傷つけられることによるものだ。これはたいへん残念なことである。
というのは、複数の研究で、従業員が効率よく働くのは自分の努力を認められたときであることが確認されているからだ。
工事現場の監督と作業員の関係を調査したミシガン大学の心理学者のチームによると、作業員を働かせようとして威張り散らすタイプよりも、作業員から慕われるタイプのほうが、作業員が効率よく働くことがわかった。

あなたが人々の心をつかみたいのなら、なんらかの方法で相手の自負心を満たすことが不可欠になる。しかし残念ながら、あまりにも多くの場合、相手を脅したり、あせらせたり、嫉妬心や不信感を抱かせたりして説得しようとしているのが実情だ。
「自負する」とは、自分の才能や仕事、業績などに対して自信と誇りを持つこと。「この分野では誰よりも知識があると自負している」というように使われる。
「自分は価値ある存在である」「自分は特別で重要な存在である」「人から大切にされている」そして、「人から尊敬されている」というようなことを実感することを「自己重要感」という。この自己重要感を高めれば、自負心は満たされる。

そのために必要なことは…
■相手を肯定し認める
■相手の話をよく聞く
■褒める
■共感する

相手の自負心を満たしてあげましょう。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『成功力』

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斎藤一人

この星は、行動の星だよっていつも言ってるんです。地球は行動の星なんです。どういうことかって言ったら、例えば幸せになりたかったら、行動しなきゃいけないってことなんです。待っていても、誰かが幸せにしてくれるわけじゃない。行動することが意志なんです。

で、間違ってたら直ちにやめるのが意志なんです。間違ってても、「我(が)」を通して言い張ったり、なかなかやめようとしなかったりするのを頑固っていうんだよね。だから間違ってたら、すぐやめればいいの。

だから、行動しながら「自分は間違ってるんじゃないか」って常に疑問を持ってて、間違ったらすぐやめる。
いったんやめたら、そのままずっとやめちゃうんじゃないよ。やめて、間違ってたところを改めて、また挑戦するっていうこと。頑固な人は、それをやろうとしないの。間違っててもやめようとしないからみんなが迷惑しちゃうんです。
例えば、自分がいじめられたら、すぐ先生に言う、警察に言う、親に言うんです。10円取られても脅し取られたとか、触られただけでも殴られたとかね。ともかく、嫌なやつ、自分をいじめるやつにとって嫌な人間になるように努力すれば、絶対変えていけるんだよ。だんだんいじめられなくなる。

で、この世で自分を助けるのは自分なんだって思って行動するの。
自分の力だけでどうしようもなかったら、周りを、例えば親なり先生なりを巻き込むんです。そのための行動が必要なんです。けんかで勝てないんだったら、周りを巻き込んで、正義の戦いをするという、勝ち方をしていかないといけないんです。
正しき者は必ず勝つ。おまわりさんが守ってくれるからね。おまわりさんは全員ピストルを持っているからね。自分にはすごい味方がいるんだと思って、堂々と戦う。

どんなにいいアイデアでも、どんなにいいことでも、それを行動に移さなかったらそれはないのと一緒。頭の中にしまっておくだけだったら、誰もわからないし、状況は何も変わらない。
例えば、「いじめ」の問題で、「嫌な奴にとって、嫌な人間になるように行動する」。それが、まわりを巻き込んで騒ぎを大きくするということ。

この地球上のすべてのトラブルや困難や嫌なことは、行動によってしか解決しない。頭で考えているということは、評論家や、傍観者や、ただの観客でいるということ。
また、「現状維持」という言い方で、問題に蓋をして、先送りするというのも、行動しないこと。
行動とは、現状を打破する姿勢のこと。行動しないということは、現状維持の姿勢のこと。どんな時も、この地球では行動が必要だ。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『身軽に生きる』

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医師、矢作直樹

たとえは悪いのですが、からだの維持は「蟻地獄(ありじごく)」に似ています。しっかりと前に進まないと、ずるずる後ろ(下)へと落ちます。
前に進む、つまり常にからだを動かす、鍛えていなければ、ずるずると衰え、さまざまな病気になりやすくなるのです。

皆さんの多くが望んでいる死に方は「ピンピンころり」でしょう。長いこと寝たきりになる状態を望む人などいません。でも、と考えます。ピンピンころりと旅立つためには、まずピンピンしていないといけません。普段から元気でないといけません。そのためには、もっとからだを動かすこと。

「疲れる、面倒くさい」そう考え、楽なほうへと流されないでください。
また、からだは「借り物」という事実をお忘れなく。私たちのからだは、なるたけ傷をつけずに、他界するその日に天へとお返ししなければなりません。その意識がなければ、からだへの感謝の念も生まれません。

すこやかに生きる。身軽に、無理なく生きる。私たちは皆、地球に住まわせていただいています。「お天道さまに、生かされている」この事実を、いつも忘れたくないものです。

疲れる、面倒くさい。こういう気持ちが強いとからだが衰える、
つまり老化も早いのです。好きなことや、習慣になっていることを面倒くさい、と思う人はいない。逆に、苦手なことや、嫌いなこと、必要ないと思っていること、時間がかかりそうなことなどは、面倒だと思ってしまう。その中の一つが、歩くことや体を動かすことです。

現代は、車社会です。特に、公共交通機関の発達していない地方では、ほんとちょっとした距離でも、車で動いてしまう。
都会に住んでいる人より、田舎暮らしの人の方が運動不足、という変な現象にもなっています。

「疲れる、面倒くさい」と言わず…体を動かす習慣を身につけましょう。

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「ポジティブ思考は笑顔から」

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里岡美津奈

笑顔は作るものではなく、出すものだと思っています。人に喜んでもらいたいという気持ちが先にあり、それを無意識に表に出そうとして笑顔になるのです。とは言え、人間ですから、落ち込んでしまう時、辛くて気がふさぐ時、怒りを覚える時もあるでしょう。

でも、それは自分の捉え方で変わってくるものなのです。心と表情は切り離せないものですが、その心を作るのは自分の意識。
ネガティブなことでも、ポジティブに捉え方を変える。その手段が笑顔と言えます。

41歳の時に、乳癌を患いました。その時は、さすがに落ち込みました。でも、よく考えてみると、自分よりさらに厳しい人生を送っている人は大勢います。
そう考えると、自分はまだ恵まれていることに気付きます。謙虚に想像力を働かせることで、「これぐらいで済んでよかった」「命の大切さを学んだ」とポジティブに捉え、私は気持ちを整えることができたのです。

また笑顔は、今まで起きたネガティブなことと決別する手段でもあるのです。
過去には、戻りたくても戻れません。だったら、いい形で忘れて行く。
嫌な事は、笑顔で一瞬一瞬、決別する。次の一瞬一瞬を大切に生きる為に、また笑顔を出すのです。

「いつも笑っていなさいね」と言う母の言葉の意味は、そういうことだったと思っています。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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企業統治と株価

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 松本晃

アベノミクスは前例のない金融緩和から始まった。
当時ならば金融緩和を行えば自国の通貨は弱くなった。
一時はドルに対して70円台だった円は、
120円までの円安となった。

すると、輸出型の日本企業だけは業績を回復した。
いつもの事である。

超金余りの海外から日本に流入した金が、
株価の急上昇をもたらす。
そこで、日本企業の企業統治の異常な事が問題になった。

取締役の多くが執行を兼任している。
ダイバーシティには、ほとんど関心が無く、
取締役も日本人の男性だけ。
自己資本利益率(ROE)は欧米企業と比較して極端に低い。
儲かっても内部留保ばかりで株主に還元しないし、
また株主も、ほとんどモノを言わない。

今、企業統治(コーポレート・ガバナンス)を、しっかりやらないと
外国の投資家は、日本から逃げてしまう。
そこで、企業統治が叫ばれ、学識者を中心にして
まとめられた。

株価の上昇に乗り遅れて、
「しまった」と悔やんでいる人が乗り出すと、
決まって暴落が始まる・・・

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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「企業を蝕む熱意なき職場」

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西條都夫

米国企業は、一般に社員の意識調査に熱心だ。社員の不満が高まれば、優秀な人から順に会社を辞めて、大きな損失に繋がるからだ。
一方、日本は労働市場の流動性が低く、社員の離職率は高くない。だから経営者は働き手の心のありように鈍感だ。

社員が会社を辞めないことと、彼らが生き生きと仕事をしているかは、また別の話だ。
日本人は、受動的な真面目さはあっても、自ら積極的に仕事に向き合う姿勢に欠け、それが労働生産性の低さやイノベーション不足に帰結している。

処方箋はある。社員の意欲を最も左右するのは、直属の上司との関係だ。部下とよく話し、彼らの弱みではなく、彼らの強みに着目する上司がいれば、職場の意欲は目に見えて上がる。
マネージャーに適切な人を選び、部下の技量を高める工夫が企業には欠かせない。

こうした取り組みは、すぐに効果が上がるというものではない。だが、さぼれば、または経営者が無関心のままでは確実に組織の活力は減退し、業績に悪影響が出るだろう。
不摂生や運動不足を続ければ、いつかは重篤な生活習慣病に蝕まれる。それに似ている。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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魂の経営

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富士フィルムホールディングス会長、古森重隆

車が売れなくなった自動車メーカーはどうなるのか。  
鉄が売れなくなった鉄鋼メーカーはどうすればいいのか。  
我々は、まさにそうした事態…、本業消失の危機に直面していた。

私が社長に就任した2000年、 富士フィルムの主力事業だったカラーフィルムなどの 写真感光材料の売上がピークを迎えた。 そして、その翌年、創業以来、 その背中を、ずっと追い続けてきた巨人イーストマン・コダック社の売上を追い越したのだ。 私が入社した1960年代初めには、売上高で十数倍の差があったコダック。 そこから40年近くかけて、ようやくかつての巨人に追いついたのだ。  

日本でのシェアは約7割と圧倒していた。しかしビジネスの世界では、絶頂のときにこそ危機が忍び寄って来ているものだ。 その少し前から、カメラの世界では、デジタルカメラが急激な普及を見せ始めていた。 デジタルカメラの普及が意味するところは、写真フィルムが不要になるということである。実際に写真フィルム市場はその後、2000年をピークに縮小し始め、それは徐々に加速し、遂には年率20~30パーセントもの勢いで激烈に収縮していった。 そして10年後には、世界の総需要はかつての10分の1以下にまで落ち込んだ。

カラーフィルムなど写真感光材料は当時、富士フィルムの売上の6割、利益の3分の2を占めていた。 その市場のほとんどが、あっという間に消失したのである。 それまで会社のドル箱だった写真感光材料事業が、わずか4,5年で、赤字事業に転落したのである。そして、この創業以来の未曾有の危機を迎えたタイミングで、 私は社長を任されることになった。

少し時計の針を先に進めて2007年。
かつては約2700億円以上あった富士フィルムの写真フィルム事業の売上は、約750億と4分の1になっていた。 印画紙等を含めた写真事業全体でも、約6800億円が約3800億円に激減した。
しかしこの年、富士フィルムは、売上高2兆8468億円、 営業利益2073億円という、史上最高の数字を叩きだしたのである。 会社は、本業消失の危機を乗り越え、新たな道を進み始めたのだ。 この間におおなたをふるった改革が、実を結んだのである。

一つは、写真関連事業の構造改革である。 写真関連事業のリストラを含む大胆な構造改革を断行した。また、写真フィルム事業の構造改革を進める一方で、 今後成長が見込めると判断した分野には思い切った投資をした。
さらにまったく新たな事業を開拓していくことで、 かつての本業が消失していく事態をカバーしていったのだ。2012年、長年のライバルであったコダックは、米国連邦破産法11条の適用を申請した。2006年4月に開所した富士フィルム先進研究所には、一つのシンボルがある。ミネルバという女神と、ふくろうだ。

哲学者ヘーゲルは『法の哲学』の序文で、『ミネルバのふくろうは 黄昏に飛び立つ』という有名な言葉を記している。ローマ神話の女神ミネルバは、技術や戦の神であり、知性の擬人化と見なされた。ふくろうは、この女神の聖鳥である。一つの文明、一つの時代が終わるとき、ミネルバは、ふくろうを飛ばした。 それまでの時代がどういう世界であったのか、どうして終わってしまったのか、 ふくろうの大きな目で見させて総括させたのだ。

そして、その時代はこういう時代だったから、 次の時代はこういうふうに備えよう、と考えた。「インターネットの登場は、人類が言語を獲得して以来の大発明」つまり、何十年万年以来の大変化ということだ。 インターネットの登場により変化したことは数えきれない。
それにともなって、消失した産業や会社の数は、かつてないぼう大な数に及ぶ。それが、まだ現在も、そして、これからも続く。本業が消失するような大変化のときは、 自分のこだわりや、思い込み、しきたりや、 ルールといった重い荷物をすべて一旦捨てなければならない。 そうして、身軽にならなければ、時代の大きな変化という谷間を、飛び越すができないからだ。

「ミネルバのふくろうは黄昏に飛び立つ」一つの時代の終わりと、次の時代へとの大きな変革期に、今我々は立ち会っている。 時代の大きな変化に備えねば。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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『「いい人」をやめると病気にならない』

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帯津病院名誉医院長、帯津良一

働き盛りの40代、いい人AさんとちょいワルBさんがいたとします。

Aさんは、まじめで努力家なのですが、人間関係を窮屈に考えているところがあります。そのため、上にも下にも気を遣い、本音を言わず、はめを外すこともありません。まじめなので健康にも十分に気を遣い、規則正しい生活を送っています。仕事はできるのですが、主体性をもってやっている訳ではなく、上からの命令を忠実にこなしているだけです。
一方、Bさんは、気ままで楽天的、道徳的に見ると不真面目なところもあるのですが、人望が厚く、趣味や遊びにも精通し、懐の深さがあります。健康には無頓着で、時にはときめきに任せて好きなものを食べたり、酒を飲んだり、夜更かししたりすることもあります。Aさん同様、仕事はできるのですが、上からの命令に常に忠実なわけではありません。ときには信念をもって仕事をしているため、いい結果が出せているのです。

これらのことからも分かるように、ストレスに悩まされることが多いのは、いい人Aさんのほうです。ストレスがたまってくると免疫力が低下し、病気になりやすくなるのは言うまでもありません。また、過労から過労死につながる危険性があるのも、Aさんのようなタイプです。
一方、ちょいワルBさんは、仕事もプライベートもときめいているため、ストレスに悩まされることはほとんどありません。ストレスを感じたとしても人生のスパイスとして捉え、困難を乗り切っていけます。そのため、過労が続いても過労死につながる危険性はない、といっても過言ではないくらいです。

二人の定年後を見てみると、さらにこの差は開きます。
いい人Aさんは、定年退職してからしばらくは開放感があっていいのですが、友人と会う機会が減っていく一方で、ときめく趣味もなく、時間を持て余してしまいます。一日中家でゴロゴロしているため、家族からイヤがられるのも、Aさんのようないい人に多いのです。そんなAさんの最大の関心ごとと言えば、健康法を実践することです。こうなると、ますますときめくことがなくなってしまいます。健康法もまじめに取り組みすぎてしまうため、かえってストレスになり、病気になりやすくなってしまうのです。まじめな人で、定年退職してから7,8年で亡くなる人が多い、と言われているのも頷けます。
一方、ちょいワルBさんは、定年後も情熱をもって働き続け、阿吽(あうん)の呼吸の悪友もたくさんいるため、ときめき続けます。健康法を熱心に実践する訳ではありませんが、ときめくことによって免疫力が高まり、結果的に病気を遠ざけているんです。そのため、ちょいワルで長生きの人は多いのです。

いい人が悪い、と言っている訳では、決してありません。終身雇用、年功序列が崩壊し、成果主義が重視される今、いい人のままでは病気になりやすく、長生きできないのを心配しているのです。いい人で損をすることほど、損なことはありません。あってはならないことです。

「いい人」は、人から嫌われることを恐れ、人に自分の意見を合わせてしまう。「嫌われる勇気」という本がありましたが、まさに「まわりの人の顔色をうかがうような生き方」をしないことです。
それは、傍若無人に自分勝手に生きるということではなく、自律して生きよう、ということ。
自律と自立は違う。「自立」は独り立ちする、独立して生きるというような意味ですが、「自律」は自ら規範を決め、自らに従って動くというように、セルフコントロールができるということ。だから、自分の決めたことによって、嫌われたとしても、仕方ないと諦(あきら)める。

勝海舟「行蔵(こうぞう)は我に存(そん)す」
自分の行ったことの責任は自分にある、だからけなしたりほめたりするのは人の勝手である。どんなふうに言われてもまったく異存はない、と。
これが、自律した人。ときに、「いい人」をやめることも必要だ。

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『いい人生には「生き方のコツ」がある』

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精神科医、斎藤茂太

前向きなオプティミスト(楽観主義者)は、病気にも、トラブルにも、ストレスにも強い。

〇前向きになって病気を治した代表的な人物に、アメリカのジャーナリストで、世界平和に対しても精力的に貢献してきたノーマン・カズンズがいる。
太平洋戦争後、来日した氏は、広島、長崎の原爆投下による惨状に心を痛めた。そして、原爆で親をなくした原爆孤児たち400人の里親を見つけ、世話をしたりしている。また、原爆によって顔などを負傷した25人の日本人女性をアメリカに招き、整形外科手術を受けさせている。
だが、カズンズはその後、重症の膠原病(こうげんびょう)に倒れてしまった。回復の可能性は500分の1という難病である。痛みで眠れない日もある厳しい病状だったが、氏は数分間、腹をかかえて笑うと1時間以上、痛みを忘れて眠ることができることに気がついた。病院で一般的な治療を受けたあと、自分で考えた治療を実践するために、病院を退院した。
その治療法とは、「笑い」と「ビタミン」である。ホテルに部屋をとると、ビタミン注射をし、喜劇俳優マルクス兄弟などの往年のコメディ映画を見て笑い、お笑いの本を読んで笑い、笑い漬けの生活を送った。その結果、500分の1の奇跡が起こったのである。大笑いは内臓を動かし、呼吸作用を盛んにする。病気を笑い飛ばそうという前向きの姿勢が自己治癒力を後押ししたのだろう。病気に勝ったのである。
ところで、氏は10歳のときに結核にかかり、療養所生活を送っている。当時、結核は死病と考えられていたが、少年であった彼は、療養所では患者たちが「オプティミスト」と「リアリスト」に分けられることに気がついた。「オプティミスト」たちはグループでいっしょに遊び、笑いあった。「リアリスト」たちはグループ活動を嫌い、孤独で味気ない生活をしているように見えた。結核が治って退院していくのは「オプティミスト」たちのほうだった。そこで彼も退院するために、遊び仲間の一員として「オプティミスト」の患者の仲間になり、結核を克服した。
そういった経験から、人間には病気と闘う潜在的な力があり、肯定的な感情がその力を引きだし、治療効果を生むという信念をもったと述べている。
1980年には、外交交渉などで世界を飛びまわった過労から心筋梗塞(しんきんこうそく)を発病した。このとき、医師は「状況そのものは回復不可能」と説明したが、回復不可能という言葉を聞いたとたん闘志が燃えあがったという。このときも氏は、自分で考えた治療計画を半年間続け、回復してしまった。
具合が悪いとき、まずチェックすることは、この頃、笑ったことがあるか、楽しい生活を送っているかどうかである。しばらく笑っていないと気づいたなら、健康が危機に瀕(ひん)しているかもと疑ったほうがいい。そこをどう乗り切るかはおのずと明らかである。
かくいう私も、つねに笑いを忘れないようにしているつもりである。ユーモアとは人生の薬味というよりも、人生そのものではないかとすら思っている。

〇初代の内閣安全保障室長佐々淳行「パニック時の特効薬は笑いなんです。 危機管理を専門にしている連中は、洋の東西を問わずブラックユーモリストですよ。とんでもないときに、みんなを笑わせる」だれもがパニックになっているとき、ユーモアがあれば、ふっと我に返り、客観的になれる。

〇筑波大名誉教授、村上和雄氏の「笑いの効用」より「私たちは糖尿病に着目しました。糖尿病の指標となる血糖値は、ほんの少しの血液で簡単に測定ができますし、明白な結果が出ます。実験は糖尿病患者に対して昼食後の40分間に、1日目は医学部教授による「糖尿病に関する講義」を聞いてもらい、2日目は落語を楽しんでもらい、終了後に採血をして血糖値を測定するというものです。講義は当然ながら真剣なもので、笑いはありません。吉本興業と共同で3回実験をして、3回とも漫才や落語を聞いた人のほうが血糖値の上昇が抑えられたという結果になりました」

〇伊丹仁朗医学博士の実験がん患者に寄席を見せ、その前後に採血をしたところ、がん細胞を殺すナチュラルキラー細胞が正常値より低めだった人は、観劇後に全て活性化していた。「笑い」は、パニックになった時も、病気に対しても有効だ。どんなときもユーモアと笑いを忘れてはいけない。

エンジンオイル、OEM仲間の経営塾より

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