債務、さもなくば悪魔

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 アデア・ターナー

通貨を創造し、購買力を創出する方法

1.マネタリーファイナンス主権国家と中央銀行が通貨を増刷し、国債の発行では賄えない財政赤字を穴埋めする。ミルトン・フリードマンが、経済が需要不足に陥った時、政府が紙幣を増刷し、ヘリコプターからばら蒔けばよいというたとえ話を使ってから有名になった。主流派経済学は強硬に反対している。大きな副作用がある。それは購買力の不適切な配分により効率が悪い所から起こる。

2.民間の銀行が企業や家計に信用を与え、新たに通過を創造する。これは何度も行き過ぎて投機やバブルを招いたにもかかわらず、自由な金融市場を正当化する効率市場仮説や合理的期待仮説に依拠して全面的に容認してきた。民間の信用創造が行き過ぎて不安定なブームと破綻を繰り返す危険性は大きい。

この2つの方法には、それぞれ長短の両面があり、それらを考慮して政策手段を考えるべきである。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『ブランドのコラボは何をもたらすか』

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宣伝会議

ここ数年間で、急激に広まってきた販売促進手法があります。
それは、ブランド間の「コラボ」(=コラボレーション)です。

スマホゲームでは、多様なキャラクターとの
コラボが当たり前ですし、
ビジネス書でも有名人同士の共著が増えてきました。

理由は簡単。SNSやメルマガ、ブログなどでブランドが
顧客リストを持ちやすくなった今、
コラボによってリストの総量を増やす手法が
効果的だからです(お互いのファンを融通し合える)。
とはいえ、異質なブランド同士のコラボは、
現実には困難を伴います。
一過性のものに終わることも少なくありません。

そんな中、4年も続く珍しいコラボがあります。
キリン「午後の紅茶」と、グリコ「ポッキー」のコラボです。

ふとメンバーのひとりが呟いた。
「プリンに醤油をかけるとウニになるよね」
一瞬、場が固まった。……それだ!
何気ないつぶやきが、ブレイクスルーに繋がった。
そこからは早かった。
すぐに「単品でももちろんおいしいが、
それだけでは完結しない。
2商品を食べ合わせると、さらに新しい味覚が生まれる」
という、今後数年続くこのプロジェクトの
根幹とも言える「1+1=2」にとどまらない
「1+1=3」の味覚設計アイデアが生まれたのだった

デザインは、何パターンも試行錯誤を重ねた。
最終的に、ペアリングが分かりやすい、
王子様とお姫様が出会うデザインが完成した。
背景は繋がっており、デザイントーンは全く一緒。
2つ並べることで、離れ離れだったキャラクターが
手を取り合う設計だ

そこで、ひねり出されたのが「キス」だった。
「1年目は手を繋いでいたから、2年目はキスというのは
どう?」
きっかけは、誰かの冗談半分での発言だった

場所は、東京と大阪で多くの人が行き交う、
JR東日本の山手線と大阪環状線の車両の「扉」だ。
1編成をまるごとジャックし、
男女がそれぞれ描かれた両開きの扉が閉まるたびに
キスをする、というクリエーティブに仕立てた

第3弾は“おとぼけ”コラボとなったのだが、
商品名からそのおとぼけははじまっている。
「午後の紅茶」は「クリーム忘れた(笑)いちごティー」、
「ポッキー」は「いちご忘れた(笑)クリーミーバニラ」。
それぞれが材料を1つ忘れてしまったために、
食べ合わせることで初めてショートケーキが生まれる、
という商品構造にしたのだ

置く側にとってみれば、
実は「定位置」を動かすことは難易度が高い。
決められたフェイス数(陳列面積)の中で、
別カテゴリの商品をねじ込むのだから。
だから「自由区画」の方が制約なく陳列ができ、
違和感の最大演出に繋がるのだ

PRバリューの最大化を考えるのであれば、
情報発信日は金曜日以外の平日に設定すべきだ。
夕方や翌日の情報番組に取り上げられる
可能性がぐんと上がるからだ。
土日の情報番組は1週間分のニュースからの
ピックアップになることが多いため、勝負がしづらい

ブランド視点での時期選定にも方法がある。
例えば「ポッキー」には「ポッキー&プリッツの日
(11月11日:スティックが並んでいる様より)」、
「午後の紅茶」には
「午後の紅茶の日(5月5日:ゴゴと55を掛けて)」が
あるように、
ブランドのアニバーサリーに当ててニュースを作るのも、
PRを取りやすくする一因である

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『禁断の説得術』

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村西とおる

デキる人はみな、説得が上手い。
世界で最も優秀な人材を輩出している大学の一つ、
ハーバード大学も、「交渉術」には力を入れています。

世の中にあるものはすべて理由があって存在しています。
その存在しているものが、
私たちにとってどのような意味があり、
それを手に入れることで
どのようなメリットが生まれるかを説明すれば、
お客さまはその品物に対して興味を持ち、
所有したいという願望を自然に持つようになる

必要だとわかっていても、お金がないから残念だけど
購入できない、ならわかります。
しかし、あなたさまほど将来のある人間が、
来る国際化社会の時代に向けて
英語力を身につける必要がない、
などとおっしゃることは天に唾する行為です

私は、一度会ったら生涯忘れることのできない
人間になることを夢見ています。
それは何も、ものすごい才能に恵まれて崇め、
奉られたいという野望に駆られてのものではありません。
何年か何十年か経ったあとでも、
あの時のセールスマンは
心の底から自分のことを思って話してくれた、と
思い返していただけるような話ができる
セールスマンでありたいと願っているのです

『二、三日考える』と言って、二、三日後、
自分のための決断をした人間は過去に一人もいないのです

もったいない、を優先して
非効率な生活を選ばないでください。
自分は今考えられる範囲でベストの選択をしている、との
確信を持てれば、
それは何よりの自信と継続の力となるのです

好きか嫌いかではなく、
損か得かで考えていただきたいのです。
やりくりのなかで毎月三〇〇〇円を投資して
英語の実力を身につけるか、
三〇〇〇円を使って飲み食いをして目先の楽しみを味わうか、
どちらがあなたさまの将来にとって得なのか、を
考えてください

「あなたの悩みは承知していますから大丈夫」との優しい、
ワンランク上の気遣いのある質問を受けることで、
女性は「この監督さんは売りモノ買いモノと、
自分のことばかりを考えることのない愛情のある人間」との
信頼を寄せるのです

私が使ったのはズバリ、
それまでお客さまから獲得した契約書です。
一〇〇通ほど契約書のコピーの束をファイルにまとめ、
いつもアタッシュケースに入れていました。
相当に嵩張るのですが、必ず携行しました

営業マンは肉を切らせて骨を断つ、真の勝者であるべきです。
相手を論破しても何の得もありません。
相手に好かれることによってのみ、
望んでいる甘美なる果実=契約を手に入れることができます

人には承認欲求がある、それをどう表現するか

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『ニューエリート』

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ピョートル・フェリクス・グジバチ 2018年の本です

最近思うのは、これまでの日本の古い「エリート」の定義が、もはや時代に合わなくなってきているということ。

世界時価総額ランキング
1.アップル
2.アルファベット
3.マイクロソフト
4.アマゾン・ドット・コム
5.テンセント・ホールディングス
6.フェイスブック
7.バークシャー・ハサウェイ
8.アリババ・グループ・ホールディング
9.中国工商銀行
10.JPモルガン・チェース

日本時価総額ランキング
1.トヨタ自動車
2.三菱UFJフィナンシャル・グループ
3.日本電信電話
4.NTTドコモ
5.ソフトバンクグループ
6.キーエンス
7.日本たばこ産業
8.KDDI
9.本田技研工業
10.三井住友フィナンシャルグループ

世界大学ランキング2016-2017版(Times Higher Education)
第1位 マサチューセッツ工科大学
第2位 スタンフォード大学第
3位 ハーバード大学第
4位 ケンブリッジ大学第
5位 カリフォルニア工科大学—————————-
第34位 東京大学

すでにシリコンバレーでは、スーツを着ている人たちがモテなくなっています。フェイスブックやグーグルの経営者をはじめ、今伸びているスタートアップで働く人は、純粋に仕事の結果だけで勝負をします
重要なのは、「今どこにいるか」という地位よりも、元いた場所と今いる場所に差があるということ。つまり、僕の成功の定義は「持続的に成長していること」です

共産主義が資本主義に敗北した。それはよく理解しています。では、資本主義は本当に勝利したのか。僕には、そうは思えません。資本家や経営者は会社で働く人の人生を顧みない。労働者も、自分の夢や家族を犠牲にしながら、会社の中で奴隷のように時間を費やす
日本人にとってエリートとは、「有名大学を卒業し、一部上場の大手企業に就職し、順調に出世コースに乗っている人」というイメージがあるようです。でも、大手企業に就職しても、入社5年目くらいにコアメンバーに選ばれるかどうかで、エリート/ノンエリートの選別がなされてしまう。

これが現実ですこれからの時代をリードする人は、ポスト資本主義の世界の仕組みを作る人たち「世界を変える」という大義名分と「楽しいからやっている」というモチベーションが両立
未来は予言できない。しかし新しい仕事を作ることは、今できる
重要なのは、仕事で自分が出しているアウトプットにプライドがあるか、そして、アウトプットを出すまでのプロセスを楽しんでいるか、です

あなたのアウトプットは誰かの幸せに貢献しているか?
働かなくていい世界になったら、何が「成功」になるのか?
「もらう価値」より「もたらす価値」を大きくする
インパクトが高く学びも多い仕事が最優先
リスケしてでも偶然を逃さない
チームメンバーは固定させない
「一番できる人がリーダー」の時代は終わりつつある

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『インド・シフト』

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武鑓行雄

経済を語る視点はいろいろあると思いますが、現状の指標(=GDP)が人口×生産性である以上、軍配は人口が多くて優秀な人材を擁する国にくだります。その点で、今最もポテンシャルを持っているのは、おそらくインド。

アメリカのIT企業の「インド・シフト」

インドでは、高度IT人材候補である理工系大学の新卒者が毎年一〇〇万人以上生み出され、その中から二〇一六年には二〇万人がIT業界に新規雇用されている
独インダストリー4.0、米インダストリアル・インターネットの主要企業はすべてバンガロールにIT業界団体である
NASSCOMやR&Dコンサルタント会社であるZINNOV社主催で、GICに関するコンファレンスが定期的に開催

二〇一六年時点で、インドのスタートアップ数は、四七〇〇~四九〇〇社である。この数字は、テクノロジー・スタートアップの数である。
他国と比べると、アメリカ(五万二〇〇〇~五万三〇〇〇社)は別格としても、二位のイギリス(四九〇〇~五二〇〇社)に次いで第三位である。第四位はイスラエル(四五〇〇~四六〇〇社)
VCは一八〇社、エンジェル・個人投資家は三五〇人、二〇一六年の投資総額は約四〇億ドルと言われている。
この額は、アメリカ(六一〇億ドル)、中国(四八〇億ドル)、ヨーロッパ(一二〇億ドル)に次ぐ投資額となる。
イスラエルの二二億ドル、日本のVC投資額一三・五億ドルを上回る

シリコンバレー発、起業家育成支援組織「TiE」インペリミウム、リトルアイラボ、ブックパッドの三社のスタートアップに共通するのは、「Aqui-hire(アクイハイアー)」されていること

〇インドのユニコーン企業(2017年8月時点)
Flipkart
Snapdeal
One97 Communications
ANI Technology(Ola Cabs)
ReNew Power Ventures
Hike
Shopclues
Zomato Media
InMobi
Quikr

世界最大のビッグデータ専業会社「ミューシグマ」

インド国内ビジネスに関しては、爆発的に市場拡大することから、当然大きなポテンシャルが予想できる「世界経済の中心は、昔からずっと中国とインドだった」

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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私のリーダー論

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 インテグラル代表取締役、山本礼二郎

人の心を動かすことができるのがリーダーの第1条件。反対者がいても、決断に納得してもらい、実行することができる。他人が認めてくれなければリーダーにはなれない。大切なのはどんな状況でも結果を出し続けること。結果が出ていれば、人々の疑念や批判は消え、支持や協力に変わって来る。優れたリーダーは人間的な魅力も持ち合わせている。心を通い合わせることができれば「大変だけどあの人の為に頑張ろう」と周囲も付いてきてくれる。そのためには人の心や全体の状況を敏感に感じ取るアンテナが必要だ。木を見ながら、森も見ることができる。そんなバランス感覚のあるリーダーが率いる組織は勝負にも強い。

苦しんでいる相手の足元を見て、リストラや資産売却を強引に迫るハゲタカファンドのような手法は日本のビジネス風土には馴染まない。私利私欲を優先するだけでは問題は解決しない。

企業経営や投資を動かしているのは人間だ。ウィンウィンの関係でなければ良い方向には進まない。きちんと相手の顔を見て本音をぶつけ合い、しっかりした信頼関係を築く。それが無ければ経営再建は成功しない。力業もできるし、相手に喜んでもらえる存在にもなれる。両方を備えたリーダーを、私は「腕力ある善玉」と呼んでいる。

腕力のある人間は悪玉になりやすい。力を持つと人間は驕りがちになる。奢れる者は久しからずというように良い結果がでない事が多い。

初対面の客と一緒に酒を酌み交わしているうちに、すぐに意気投合してしまった。会話の9割はビジネスに関係ない話題だった。要するに信頼関係を築くことができた。人間は論理だけではない。ハートが繋がることが重要だ。
もともと大阪生まれで、吉本新喜劇などのお笑いが大好きなので、自分の役割はチームの潤滑油だとずっと意識してきた。その場の空気を、どうほぐすか、どうしたら皆に心地よい環境なるか、いつも考えている。経営危機を経験した会社を再建するにはムードの切り替えが効果的だ。

顔が見える経営が理想だ。逆に言うと顔が見えない経営は危ない。企業経営にとって「規模と時間」は大敵だ。規模が大きくなるほど、時間が経過するほど人心が離れやすくなる。
多才なタレント集団なので、プライドも高いし、個性派も多い。そのまま放置していたら遠心力が働きかねない。そこで大切にしているのが、各社員の心を親身になってケアすること。単純なことだが、温かみがあり、安心感が持てる職場だからこそ、初めて個々の社員の能力を上手く引き出すことができる。
所詮、人間は一人では生きていけない。一人でできることも限られている。そんな人生観も私のリーダー論に大きく影響している。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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「コンプラ疲れ」

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飛松純一

「コンプラ疲れ」と弊害まで指摘されているのに、
懸命に対処しても不祥事はなくならない。

多くの上場企業では、将来に向けた法令順守体制は
整ってきている。

だが、既に起きてしまったり、
長期にわたって起こし続けている違法行為を掘り起し、
公表・是正する自浄作用を持つレベルには、
達していないのが現実だ。

周囲の全員が「これまで問題はなかった」とする
社内慣行に疑問を呈することには、非常に勇気がいる。
「忖度する」文化も影響している。

対策としては、内部通報者のさらなる権利保護や
監視・監督システムの一層の充実、
法令違反に対する厳罰化などの方法もある。

しかし、会社法的見地からの対応には、限界がある。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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私のリーダー論

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 石坂産業、石坂典子社長

毎期の売上高も大事です。でも社員はリーダーの口から、未来の話こそ聞きたいと思っている。
想像できないような遠い先に、世界はどうなっているか。自分たちは、どんな役割を果たせるか。単に会社の将来の話だけでは、若い人たちは自発的に動いてくれません。

この人は何をしたいのだろうと、リーダーは日々、社員から人間性を見られています。
責任感だけでは、リーダーはできない。事業への前向きな使命感を持っているかどうかが大事だ。それと情熱。
どれが欠けてもリーダーは難しい。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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「無意味な速読」

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速読、速聴、フォトリーディング。巷に溢れる”高速インプット”の高額なセミナーや教材。実はこれ、科学的な根拠はないって知っていましたか?NASAやカリフォルニア大が実験で証明しています…そこで述べられていることは、
・パラパラとページをめくる行為は、それだけ内容の「理解度が低く」なる
・眼球をすばやく動かしたり、周辺視野を使ってページ全体を見わたす
 テクニックは無意味。読書において、目の動きの重要性は10%以下、
 いくら眼球を鍛えても意味がない。
・2008年、速読大会でチャンピオンになった人物に「ハリー・ポッター」を
 読んでもらったがストーリーをまったく理解できていなかった。
 などなど、、

身近な人では脳科学者の茂木健一郎さんが、「フォトリーディングは、いわゆる都市伝説の類で、あまり深入りしない方がいい」と、自身のブログに、はっきりと書いています…
どれだけ高速にページをめくったとしても「理解」できていなければ意味がありませんよね、、、それではその技術を身につけるためにはたいたお金や時間が全くの無駄になってしまいます、、

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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なぜ「食べ放題」や「ビュッフェ方式」の店が潰れずに儲かるのか

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塚崎公義:久留米大学商学部教授

〇食べ放題の店でも固定費は増えない 
企業のコストは、「固定費」と「変動費」に分けられる。変動費とは、売り上げが増えるとコストも増える部分であり、レストランでいえば材料費が代表的なものだろう。
一方の固定費は、売り上げに関係なくかかる費用であり、レストランでいえば店を借りる費用、つまり家賃や正社員の給料などである
レストランの場合、材料費が売り上げに占める比率は高くないといわれているので、ここでは3分の1としよう。 普通のレストランでは、1500円の料理を提供しているとすると、変動費は500円である。客が1人も来ないと、レストランは固定費分だけ赤字になる。
客が1人来るたびに、1500円と500円の差額である1000円分ずつ赤字が減っていき、いつかは黒字になる。 黒字になるために必要な売上高を「損益分岐点」と呼び、それを超えれば客が1人増えるたびに利益が増えていくことになる。 

これに対し、高めの固定料金を設定する食べ放題の店では、客が2人分の料金を支払って3人分食べたとすると、料金が3000円で変動費は1500円であるから、客が1人来るごとに赤字が1500円ずつ減っていく。
客にとっては2人分の料金で3人分食べられて大満足、店にとっても客が来るたびに赤字が大きく減っていくので、これまた大満足だ。客が3人分食べたとしても、店の費用は材料費分だけしか増えないからである。 
客が満足し、来店客数が増えることも、店にとっては嬉しいことだ。普通のレストランよりも来店客数が多ければ、1人当たりの赤字の減り方の大きさとの掛け算で赤字が急速に減っていき、簡単に損益分岐点を超えて黒字になるからである。 余
談ではあるが、食べ放題よりもさらに儲かるのが飲み放題である。 売値に占める材料費の比率が低いため、3杯分の料金で5杯飲む客が来店すると大きな儲けが期待できるからだ。客が“お得感”にひかれて来店すれば、なおさらいい。コンパの幹事が、大酒飲みの会費を多めに徴収するか否か悩まずにも済むため、大人数の団体客が来るようになるというメリットも見込まれる。

〇ビュッフェ方式は規模の利益で効率がよく儲かりやすい 
ビュッフェ方式というのは、店の中の大きな皿に料理が山盛りになっていて、客が自分で好きなものを好きなだけ取って食べる方式のこと。
グラム単価の高そうな料理(例えばチャーハンではなくローストビーフ)ばかり食べる客がいたりして、いかにも儲かりそうにないイメージがあるが、実は儲かる仕組みが満載なのである。 誰でも思いつくのが、料理を盛り付けて客席まで運ぶ店員が必要ないことだろうが、メリットはそれにとどまらない。 普通のレストランでは、客の注文を受けて料理を作るため1皿ずつ作ることになるが、ビュッフェ店では大皿に山盛りの料理を一度に作ることができる。20人分の料理を作っても、手間が20倍かかるという訳ではないので効率的だ。いわゆる「規模の利益」である。 
これは、大企業が中小企業より儲かる理由の一つでもあるのだが、ビュッフェ店の場合は大企業でなくても規模の利益を享受できるのである。 また、普通のレストランでは、客が来て注文してからコックが働き始めるため、コックがフル稼働するのは昼食時と夕食時だけだ。逆に言えば、コックが昼食時と夕食時に作れる料理の分しか客を受け入れることができないことになる。一方でビュッフェ店の場合、コックが朝からずっと料理を作ることができるので、コックがフル稼働して作った分だけ客を受け入れることができる。 

〇客席の回転率でもメリットは大きい。
普通のレストランでは、客は注文してから料理が出てくるまで待っていなければならないので回転率が悪い。だが、ビュッフェ店であれば、入店すると直ちに客が食べ始めるので回転率がいいのだ。また、注文を間違えて作り直すといった手間がないこともメリットと言えそうだ。 
普通のレストランでは、メニューにある料理をすべて提供できるよう、多品種少量の材料をそろえて待たなければならず、かなりの部分が使われずに廃棄されることも少なくない。だが、ビュッフェ店では使う材料だけを仕入れればいいので無駄もない。
場合によっては、少品種多量の仕入れで済むこともあるので、値引き交渉だって可能だ。 このように、食べ放題の店は売り上げに占める変動費の小ささで儲けているといえ、ビュッフェ店はそれに加えてコックの効率の良さなどでも儲けているのである。それで客が満足しているのであれば、まさに「ウイン・ウイン」の関係といえる。

〇「元を取るまで頑張る」のは非合理な行動で大間違い 
店の立場を離れて、客の立場で考えてみよう。「3000円で4500円分の料理が食べられるから、食べ放題の店を選ぶ」というのは正しくない。というのも、4500円分の料理が口に合わなければ、それは苦痛なだけだからだ。 そして、料金を払って着席したら、払った代金のことは忘れよう。 しかし、頑張っても払った金は返ってこないのだから、払った金のことは忘れて、その時点で自分が一番幸せになれる選択肢を考えるべきだ。極端な話、店の料理が口に合わなかったら、食べずに出て自宅でお茶漬けでも食べよう。「払った金を損する」だけの方が、「払った金を損した上に、まずい物を無理して食べる不愉快さを味わう」よりマシだからだ。 このように、払ってしまって戻ってこない費用のことを「サンクコスト」と呼ぶ。払ってしまった金のことを考えて非合理的な選択をする人は意外に多い。 サンクコストは、さまざまな場面で人々の非合理な行動を引き起こす。例えば、買った本がつまらなくても、最後まで読む人がいる。これは、「買った本の代金を損する」代わりに、「買った本の代金と読んだ時間の両方を損する」という愚かな選択だ。食べ放題のレストランや読書時間くらいならまだいいが、ビジネス上の経営判断を誤る例も多いので、注意が必要である。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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