大人の筋活

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森谷敏夫、京都大学名誉教授

〇筋肉の役割
体を動かす。体を衝撃から守る。代謝をアップする。心臓の血液循環を助ける。免疫力を上げる。水分を蓄える。熱を作る。生理活性物質(マイオカイン)を作る。

筋肉は、歩く、走る、座るなど、生活のあらゆる動作に欠かせない。筋肉は単なる運動器にとどまらずに、衝撃から体を守ったり、糖質と脂質を燃やして熱をを作ったりする。
筋肉を動かしているのは脳。筋肉が動いている時は、脳も活発に活動している。最近は、筋肉から様々な臓器に働きかける生理活性物質(マイオカイン)が分泌されることが注目されている。その1つの脳由来神経栄養因子(BDNF)は、脳で学習や記憶を司る海馬を活性化し、認知症の予防や改善に繋がることが分かって来た。

筋肉はいわば、生きる力の源。筋肉が衰えないように体を動かすことは、健康的な日常生活を送る上でとても大切だ。必要に応じて刺激することで、体が動きやすくなるだけでなく、心臓も脳もハッピーになって、元気に自立した人生を送れる。大人の筋活の目的は、ここにある。

筋肉は、何もしなければ25~30歳ごろから1年に1%ずつ減っていく。筋肉は、瞬間的に大きな力を出すけれど持久力に乏しい速筋と大きな力は出ないけれど持久力のある遅筋で構成されている。加齢によって減りやすいのは速筋だ。
速筋は大きな負荷をかけなければ鍛えられないと考えられていた。しかし、近年の研究で、軽い負荷でもスピードを速くすると、速筋もそれなりに鍛えられることが分かって来た。つまり、筋力に自身の無い人でも、軽く動くこと繰り返せば、重いバーベルを上げ下げするのに近い効果が得られる。

〇筋肉が減るのは老化現象とは限らない。
宇宙飛行士を見ると、2週間無重力の中にいると筋肉が15%減少している。筋肉のエネルギー源である糖質が燃焼しないので、血糖値も悪くなっている。

筋肉の材料となる蛋白質を毎日3食しっかり摂る。蛋白質が足りないと、筋トレをしても筋肉は減っていく。筋肉をつけるため1日に必要な蛋白質の量は、体重1㎏に対して1.2~2.4g。体重が50㎏の人なら60g、朝昼晩各20㎏が目安だが、摂りきれてない場合が多い。
歳を取ると筋肉を合成する力が弱くなるので合成を促すロイシンなどの必須アミノ酸をサプリメントなどで補うのも有効だ。

筋トレなどの運動を行うと、刺激を受けた筋繊維の中で筋核の数が増える。筋核には筋トレの情報を記憶する装置=マッスルメモリーがあり、運動を辞めて筋肉が落ちても筋核自体は残る。なので、運動を辞めていた人も、再開すればマッスルメモリーが活性化して筋肉が効率よく合成される。

筋トレが苦手な人は、階段を使うように心がける。座る時間を短くする。テレビを見ながら足踏みをするなど、生活の中で、より多く体を動かすことから始めてみる。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『リクルートのDNA』

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リクルート創業者、江副浩正

起業家は、起業するとき「こんな事業をしたい」「こんな会社にしたい」という夢や理想を必ず抱く。親しい仲間と立ち上げる場合も同じで、全員が同じ方向を向いている。しかし、1年経ち、2年経ちすると、考え方が違ってくるケースもある。急成長したベンチャー企業が突然低迷するのも案外この“理想のベクトル”が一つではなくなったことがあるのかもしれない。
経営者にカリスマ性があれば、その人間的な魅力や個性によって社員はその人についていくが、一度ベクトルがずれると、なかなか元の軌道には戻らない。

私はそもそもシャイな性格で、カリスマ性はない。人前で話すことも苦手だった。社員の前で話すときは前日から準備して臨んだが、専務の森村稔は私にしばしば忠告した。
「ドラッカーはこう言っているとか、松下幸之助語録にこうあるといった、他人の説を引用した話や新聞記事を引用した話が多く迫力がない。また、状況説明的な話が多すぎる。“僕はこう考えている”“リクルートをこんな会社にしたい”“みんなこうしてほしい”という経営者自らのメッセージを強く打ち出さないと、力強さに欠ける」

そういわれても、私は自分のメッセージがなかなか出せなかった。それは、リクルート創業期の私が克服しなければならない弱点でもあったのである。そのためもあって、リクルートでは私の思いや経営に対するスタンスについては「社是」あるいは「心得」などとして文章にし、それを社員教育に教材にした。それが結果的にリクルートに共同体意識を醸成し、独特の企業風土や企業文化が形成されたように思う。

リクルートについて、外部の人たちの多くは「自由闊達(かったつ)」というイメージを持っておられるようだ。事実大半の社員は、風通しの良い、何でも自由に発言できる会社であると思っている。

社是と社訓は私が草案を書いた。それをもとにじっくりT会議(泊りがけの取締役会)で議論を重ね、森村稔に補筆してもらった。こうしてつくったのが、次の「経営の三原則」である。
《経営の三原則》
1. 社会への貢献
2. 個人の尊重
3. 商業的合理性の追求
「社会への貢献」とは、これまでにない新しいサービスを提供して、社会の役に立つこと。リクルートの目標として掲げた。だから「新しいサービスがどんなに儲かる事業であっても、社会に貢献できない事業ならば、リクルートは行わない」とした。
「個人の尊重」は、人はそれぞれに違いがある。得意なことと不得意なこととがある。その違いを積極的に認め、各人が得意なことを組織に提供しあって大きな成果を上げていくことを目指す。もっとも、多くの場合、人はやりたいことと、できることとは違う。自分が思っている自分と、人が見る自分とも異なる。単純に個人を尊重するのではなく、そのギャップは埋めなければならない。そのために、自己申告制度やR0Dなどのプログラムを導入した。
「商業的合理性の追求」は、松下幸之助語録に「利益を上げ税を納めるのが国家への貢献」とある。これを教訓とし、リクルートも「仕事の生産性を上げ、仕事のスピードを高め、高収益会社にして税金を納めることがリクルートの誇り」とした。

企業が収益を上げるには、
1. 質の高いサービスを提供する
2. モノ・サービスをスピーディーに提供する
3. コストを下げて顧客への価格を下げる
という三つの方法がある。
リクルートでは、このうち1と2に重きを置いた。仕事はできるかぎり外部の一流アートディレクター、デザイナー、一流のライター、一流のカメラマンに依頼し、経費節約には関心が低かった。情報の価値は時間の経過とともに下がる。原稿用紙を節約するよりスピードを大切にしたのである。

社是と同時に社訓も決めた。私は高校の漢文の時間に出会った言葉、易経の「窮すれば変じ、変ずれば通じ、通ずれば久し」を人生の指針の一つにしていた。その言葉をもっと積極的に表現したのが、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
私が考え、これを社訓にしてはどうかと提案すると、みんなも賛同してくれた。

リクルートほど、各界、各分野の経営者やリーダーを輩出している企業はない。それは、「社員皆経営者主義」を掲げているからだ。資源小国の日本が世界の荒波の中で生き延びるには、新しい産業がいくつも生まれることが必要だ。
そして、「起業家精神」こそが、経済を活性化させ、日本経済を復興する。

大事なことは、どんなに個人を尊重し、社内が自由闊達であっても、会社の方向性というベクトルだけは合っていなければならない。もし方向性が間違っている人がいたら、その人にパワーがあればあるほど、能力があればあるほど、会社の進む方向とは真逆に進み、最悪の場合、会社は倒産に至るからだ。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」起業家精神を旺盛に発揮し、自ら機会を創り出そう。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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『ナイト・サイエンス』

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筑波大学名誉教授、村上和雄

私はよく、科学には「デイ・サイエンス」と
「ナイト・サイエンス」があると言います。

「科学」の一般的なイメージ、
つまり、仮説にもとづいて綿密に実験を繰り返し、
実証を積み重ねていくというのは、
「ディ・サイエンス」です。
このように理性的、客観的な科学は、
いわば科学の「表の顔」です。

では「ナイト・サイエンス」とは何か。

それは、ひとことで言えば、
直感やインスピレーションがものを言う、
科学の「裏の顔」です。

科学者がこんなことを言うと、驚かれるかもしれません。
しかし、科学には、確かに、
計算とは違う次元で働く力によって
大きな進歩がもたらされるという一面があるのです。

そこで大切なのが、コミュニケーションです。
ずっとこもっていた研究室から飛び出し、
さまざまな人と出会い、新しい刺激や情報を得る。
そこから新しい発想が生まれ、
大きな発見につながっていきます。

「ナイト・サイエンス」の可能性を強調するのは、
やはり、研究をするうえでも、仕事をするうえでも
「情報」がいかに大切かということを言いたいからです。

じつは、環境の変化と同時に、
情報は遺伝子のオンに深く関係しています。

この情報化社会に情報が大事というのは
当たり前のように思えるかもしれません。

しかし、私が言っているのは、
インターネットを検索すればいくらでも出て来るような、
手に触れられない「情報」のことではなく、
人とじかに向き合って得る「人的情報」のことです。

人と腹を割って話せる「ナイト」にこそ、
いまの仕事をより充実させる可能性が潜んでいるというのも、
そのためなのです。

たとえば、仕事後の一杯やパーティーなどの場、
すなわち「ナイト」の場で耳をそばだてる。
こういうところで、ふと得た小さな情報が、
以後の仕事に大いに役立つことがあるのです。

私と一緒に研究をしていたある日本人は、
パーティーに行くと、ろくに食事もせずに
情報集めに専心していました。
ホテルで開かれるセミナーに行っても、
用意された個室には泊まらず、
大学院の学生たちと夜通し語ります。

「一つの情報が人生を変えるかもしれない」と言って、
情報収集に専念しているのです。

研究にしても仕事にしても、できる人というのは、
例外なく情報収集が上手な人だと思います。
そういう人は、有益な情報はどんなに小さくても見逃しません。

それにはもちろん、玉石混交の中から
有益な情報を選び取る能力も必要ですが、
まずは、どんなことも漏らさないように、
きめ細かくアンテナを張っておくことだと思います。

「多くの人が、話上手だから
人との関係は得意だと思っている。
対人関係のポイントが 聞く力にあることを知らない」
( ピーター・ドラッカー )

情報力とは聞く力。
自分ばかりしゃべっている人には情報は集まらない。

聞く力がある人は、話の合間に、
あいづちや、うなづきや、驚く力のある人。
驚く力がある人とは、「すごい」とか「さすがです」
といった感嘆の言葉や、
驚きの表情を自然に出すことができる人。

人は、自分の話に、驚いたリ、感動してくれると、
もっと話したくなる。
だから、情報収集の上手な人は、聞き上手。
「仕事ができる人は、例外なく情報収集が上手」

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より

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