「仕事後進国」日本から脱却

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岡田兵吾 [マイクロソフト シンガポール シニアマネジャー]

●日本はスピードが致命的にトロい 
●時間は限られている。圧縮化が必要 
●自分でやったほうが早い!は損している 
●部下をヒーローにするためのマネジメントをする

仕事をうまく任せることで、
周りの人間が仕事ができるようになる。 
そうすると、自分は別の仕事をすることができる。 
このサイクルで、仕事は効率良く回り、
プライベートとのバランスも取れるようになる。

会社の人間と信頼関係が気付けないと、仕事の効率も下がる。 
余暇の時間を作るためにもコラボレーションは大事だ。

日本人は世界的に見ても、協業(コラボレーション)がヘタだ。 
これは日本が得意としている
「チームワーク=号令のもと一糸乱れぬ行動をすること」に関して
ということではなく、 
人種や価値観の異なる人々と考え方をオープンに話し合って 
仕事を進める協業が下手だということだ。

日本社会では、ちょっと質問したり、少し意見を述べるだけで 
怒られてしまう場合があるので、
気軽に「色々なことを聞いても良い人」が限られてしまう。
それに比べて外国人は、実にうまく対処する。 
異なる意見や考えを笑顔で聞いて、
お互いに素直に話し合って議論する。 
また上司にしても、海外では上下関係があまりなく、フラット。 
友人のようにフランクに接する場合が多い。

上司の仕事の本分は、上下関係よりも自分のチームに 
最大限のアウトプットを出させることなので、 
「How can I help you?(なんか手助けできないか?)」 
「Any problem?(何か問題あるか?)」と、 
上司のほうから積極的に気にかけて問題点を聞き出し、 
部下がより働きやすい環境で
アウトプットを出しやすいよう、サポートしているのだ。
  
このような環境下であるからこそ、
ガチンコ本音で発言しやすくなり、 
新しい価値観を生み出しプロジェクトを進めることができる。

もちろん、反対意見も歓迎される。 
これは、ディベートテクニックとして
相手に反対意見をぶつける 
「悪魔の代弁者(Devil’s Advocate)」という
手法を使い慣れていることもある。

しかし、日本社会では理論的にディベートテクニックを使うことさえも、 
「異なる意見=相手の思想を否定=相手が嫌い」と捉えられてしまい、 
ケンカした小学生のように仲が悪くなってしまう場合もある。

日本の「仕事後進国」の改善にこそ着手していかないと、 
シャープや東芝のようなケースがこれからも、続いていく懸念を拭い切れない。

日本企業がイノベーションを生み出せない一番の大きな弊害は、 
意見やアイディアが磨かれない環境だ。
マイナス評価や意見をすると嫌われてしまう環境では、 
多くのアイディアの種は埋もれていることだろう。

日本の従来型である「1人の絶対的なリーダーがいて全責任を取る」
環境にも、問題アリだろう。 
あらゆる異なる意見を受け入れる環境では、 
メンバー全員がリーダーシップを発揮する 
「メンバーのリーダーシップの総和で業務を推進する協業」こそが、
新しい価値観を生む。 
結果として、業務を効率的に効果的に時間短縮し、推進し、 
インパクトとイノベーションを生み出してゆく。

とにかく日本にとっては、意見やアイディアの芽を発言しやすい環境へと 
スイッチを切り替えるための模索が急務であろう。

デロイトコンサルティング東南アジアにて、
シンガポールを基軸に 
アジア全域の日系企業進出支援を行っていたが、 
欧米多国籍企業と日系企業では圧倒的なスピード差があり、驚愕したものだ。

たとえば、アジア全域の業務統合の
基幹システム(ERP)導入プロジェクト。 
日系企業は1ヵ国に1年ほどかけて導入していたが、 
欧米多国籍企業がシステム導入に業務改革も含めて、 
10ヵ国を10ヵ月で完了してしまったのを見たときには、
この違いに唖然としたものだ。

日本では大規模プロジェクトでは、よく
「Go/No-Go Meeting(実施するか否か)」と 
プロジェクトの実施可否判定を行うが、
海外ではこんなものは存在しない。

「Go/How Meeting(実施する。じゃあどのように?)」と、 
プロジェクト達成に向け動く前提で実現方法を模索していく。 
日本流の「Yes, let me think」
(了解。じゃあ、どうするか考えさせてくれ)ではなく、 
グローバルは「動きながら考える」のが基本スタンスなのだ。

また、「シャープへ出資、最大2000億円減……
鴻海打診、機構の3000億円下回る」という記事が報じられたが、 
意思決定のスピードの遅さが首を絞めた典型例だ。

トロトロちんたらし続ける様子は、
外国人には理解しがたい「無意味ワールド」だ。 
結果、シャープは選択肢が狭まり、再生機会を大幅に逃した。

台湾企業に買収されるシャープをはじめ、 
日本のビジネスがアジアなどの海外で勝てなくなった背景には、 
仕事のやり方に関する「後進性」にも原因がある。

日本人は勤勉で真面目なので、効率よく仕事しているように思いがちだが、 
日本人は効率的に仕事をするのが苦手だ。

お笑い芸人でありながらIT企業役員を務める
厚切りジェイソンが発した言葉 
「日本はスタート時間に厳しいのにエンド時間にルーズ」は鋭い指摘だ。

エンジンエオイルのOEMも、エンドの時間をもっと考えねばなりませんね。

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