middle is missing

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國學院大学教授、 秦 信行


1990年代の末から日本でベンチャーキャピタル(VC)・ビジネスを行いながらベンチャー支援活動を約15年続けてきたサンブリッジ グループのCEOである
アレン・マイナーが、日本のベンチャーキャピタルの現状の問題点の1つとして挙げてくれたのが“middleis missing”という問題である。どういう意味か。


アレン曰く、日本ではIPO時に関与するVCがIPO候補の企業の株式公開・上場(IPO)を急がせすぎている。
本来ベンチャーが手掛けている事業の潜在的な拡大余地は大きく、
もっと大規模な先行投資を未公開・未上場段階で実施すれば
その事業の潜在力を十分に開花させることが出来るにも拘わらず、
早い段階でとりあえず収益化させて上場させてしまっている。

加えて、IPOを急いでしまうと、上場したために様々な制約が生まれる結果、
経営面の自由度が早い段階で狭められてしまう。
例えば、IPO時の公募増資で調達した資金にしても自由に使うことは
実は難しい。
何故ならその資金を先行投資に回してしまうと、IPO直後にその投資負担で
減益になる、場合によっては赤字になる恐れも出てくるため、
一般株主のことを考えると投資を躊躇してしまうからだ。

よく言われるように日本の新規上場企業の業績がIPO時に
ピークになるといったケースが多いのも、
さらに言えば日本発のグローバル・ベンチャーが出てこないのも、
そのあたりにも原因がある。

確かに、日本のVC投資をみると追加投資があまり行われていない。
例えば2014年度の新規投資と追加投資を比べると、
新規投資が追加投資を上回り、1件当たりの投資金額についても
新規投資の方がかなり上回っている。
常識的に考えれば追加投資金額が新規投資金額を下回ることは不自然だと
言わざるを得ない。
それくらい、日本では追加投資が行われていない。
正にアレンの言う“middle is missing”なのだ。

それは日本のVC資金量が少ないためなのであろうか。それもあるとは思うが、日本のVCの投資戦略、ないしはベンチャーの事業への理解度に原因がある。
一方、米国のデータをNVCAのデータで確認すると、
日本とは逆に追加投資金額は大きく新規投資を上回り、
1件当たりの投資金額も追加投資の方が大きい。
さらに米国では最近、このコラムでもユニコーンとして紹介したような
未上場の段階で数百億円規模の資金調達を行っているベンチャーが
かなりの数出てきている。
これは、米国のVC資金の豊富さを背景にしたバブルかもしれないし、
米国でのIPOがSOX法以降敬遠されていることの反映かもしれない。
しかし、少なくそれだけの金額のVC投資が未上場の段階で行われていることは事実なのだ。
日本でも“middle is missing”の問題を正しく検証し、是正する必要がある。

エンジンオイル、OEMについても、
必要十分なお金を使えないのなら、意味がないですね。



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