中小企業のB2C商品開発

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資金も人材も少ない企業のB2C商品開発では
「高性能・高価格・高利益率」を目指すべきです。
しかし「高価格・高利益率」はメーカーなら
誰もが熱望していることで、
それに見合う「高性能」が見つからなければ、
高価格・高利益率なんて絵空事にすぎません。
 
その解決策のひとつが、
「プロ寄りの高品質な趣味製品」です。
中小企業が狙うべき「高性能」について考えてみましょう。
 
★B2Bの「高性能」とB2Cの「高性能感」
 
まず、B2C商品の「高性能」を理解しておく必要があります。
 
B2Bでは受注した仕様書通り(もしくはそれ以上)の性能の実現が
高性能ですから、とてもわかりやすいものです。
しかし、B2Cにおけるそれはもう少し複雑です。
B2C市場における高性能とは決してスペックのことではなく、
「高性能感」とでも言うべき感覚的なものです。
ある商品を使用して「使いやすくて期待通り
(もしくは期待以上)の結果が得られた」と感じたとき、
はじめてユーザーは、その商品を高性能と評価するのです。
 
例えば、写真撮影が趣味の人がいたとします。
彼にとってカメラとは、夕日に映える湖の水面でも
道端の可憐な花でも、昼でも夜でも室内でも、
確実に思ったとおりの写真を撮るための大切な道具です。
そんなユーザーのニーズを満たすために、
カメラに求められる機能は多岐に渡ります。
多機能でないと困るし、
それを使いこなすのは喜びでこそあれ、苦痛ではありません。
 
でも、多機能カメラを嬉々として使いこなす彼が、
多機能な電子レンジを使いこなせず、
ミルクを温めることに失敗したりします。
そんなとき彼は、カメラの高性能感に満足しつつも、
電子レンジは役に立たないと感じることでしょう。
反対に、料理が得意な人は同じ電子レンジを高く評価し、
多機能カメラを高価な玩具とみなすかもしれません。
 
つまり、B2C商品の「高性能感」は、
ユーザーの趣味や経験や能力によって
大きく変化してしまうのです。
 
★狙うべきはマニアにとっての「高性能感」
 
大企業は誰もが高性能だと評価するような商品を
作らなければなりませんが、
中小企業が狙うのは
10年かけて毎年数千台販売していくようなニッチな市場です。
だから、ほんの一握りの人が「使いやすくて期待通りだ」と
喜ぶような「高性能」を目指すべきなのです。
 
ほんの一握りであっても、高性能だと感じたら
高価でも購入してくれるユーザー。それがマニアです。
マニアとは独自の判断基準を持っている人たちなので、
自分が高性能だと評価したら、あまり価格を気にしません。
むしろ、高価なほうを喜ぶ傾向すらあります。
 
★「高性能」は「多機能」とは限らない
 
一握りのマニアが高性能だと評価してくれる商品、
それが「プロ寄りの高品質な趣味製品」です。
そしてマニアが喜ぶ商品は、むやみに多機能である
必要はありません。
DIYが趣味の人はハンマーやペンチに、
料理が趣味の人は鍋や食器に、
こだわりを持っているはずです。
ハンマーも鍋も、多機能ではありません。
マニアの琴線に触れる商品であれば、単機能でも喜ぶのです。
 
バルミューダは、トースターを新発売しましたが、
そのサイトでは「バタートースト」から
「カリカリのベーコンエッグトースト」「喫茶店のピザトースト」……と、
これでもかとばかりにトーストのレシピが紹介されています。
もちろんグラタンやクッキーなど、
トースターで作れる料理ならなんでも調理できるのですが、
トーストに特化した単機能トースターという商品提案に、
トーストマニアならきっと大喜びすることでしょう。
彼らにとって22,900円(税別)は
決して高い買い物ではないでしょうし、
そんなトースターなら喫茶店やカフェのプロも
注目していることでしょう。
 
★マニアが作った商品は強い
 
また、何度も紹介している大里化工の商品撮影セット
「フォトラ」は、社長自身がカメラマニアだったからこそ
生まれた商品です。
フォトラも単機能ですが、カメラマニアの社長のこだわりが
詰まっています。
フォトラは、室内の机上で高さ20㎝程度の対象物を撮影するときに
最適な設計になっています。
そのような商品だったからこそ、
フォトラに最初に飛びついたのが、
ジオラマやフィギュアの撮影が趣味の模型マニアだったのです。
口コミでフォトラの良さを広めてくれたのも、
そのマニアたちでした。
フォトラをいたく気に入ったある模型マニアは、
なんとフォトラの1/20の模型を作ってくれました。
たった一人でもそこまでユーザーから愛される商品を
開発できたら、メーカー冥利に尽きるといえるでしょう。
マニアがマニアのために作った商品、
それがB2Cの趣味の市場では強いのです。
 
反対に、マニアの不在で開発が止まってしまったこともあります。
以前、肉や魚などの冷凍食品を常温でおいしく急速解凍できる商品の開発を
お手伝いしたことがありましたが、
残念ながら商品化まで至りませんでした。
その原因の一つが、開発チームに料理マニアがいなかったことにあると感じています。
 
開発チームの当事者にとって身近な日々の仕事や
大好きな趣味の世界の中にこそ、
一握りのマニアが高性能だと評価する商品、
中小企業が狙うべき「高性能」についての開発テーマが埋もれているのです。
 
ぜひとも参考にしたいと思う、エンジンオイル、OEMの櫻製油所です。
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