明治大学教授、齋藤孝

道徳の第一原理は、
「己の欲せざる所、人に施すこと勿(なか)れ」だ。
「自分がやられて嫌なことは人にするな」、
これが道徳の基本だ。

人間が社会生活を営んでいく上で、意見や利害の対立が起きることがある。
そのような時に、最低限、人々の生命や財産、人権などが
侵された場合のことを想定して、
法が定められている。
法を侵さなければ自由に振る舞っていいのかというと、
そうではない。
人々の権利同士がぶつかり合う状態になってしまうと、
人間関係がギクシャクしてしまう。
でも、法の外側にクッションがあれば、
権利同士がぶつからない、あるいはぶつかっても
衝撃を吸収できる。

そのクッションの役目を果たしているのが、道徳だ。
自分がされて嫌なことを、人にするのはやめよう。
みんなが、そう思えば
人間関係に道徳のクッションができる。
そんなクッションがたっぷりある社会は、
個々人の権利と権利がぶつからず、人間関係がギスギスしない。
それが暮らしやすい社会だ。

自分がされて嫌なことを平気でする人がいる。
「自己中心的」だったり、「自分の非を認めない」、
「共感しない」、「良心が欠如している」、「人と親しい関係を築けない」、
「無表情」、「冷淡」、「反社会的」、「嘘をつくことに抵抗がない」、
「周りをコントロールしようとする」等々。
これらを総称して「サイコパス」(反社会性パーソナリティー障害)などと言う。

思いやりがある人は、他人の立場に立つことができる。
他人の痛みや苦しみ、喜びを、自分のことのように感じることができる。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より