明治大学教授、齋藤孝

人類がいまだ経験したことのない長寿社会の到来…。
なかでも日本はその先頭を走っている。
手本にすべき「先例」のない新たな時代を迎えている。
働き方にもパラダイム変化が生じている。
60~65歳で定年を迎えても、そこからの人生が30~40年もある。
「定年を迎えたら、後はのんびり過ごす」という生き方は、
もはや現実にそぐわなくなった。
60代からを「老後」と呼ぶには早すぎるし、「余生」というには長すぎる。
人生が100年近くも続くということを前提にして生きていなかった時代から、
明らかにそれを意識しなければいけない時代へと変わった。
本来、「人生をどう生きるか」というのは
思春期から青春期の若者たちがテーマとする問いだったが、
成熟した大人たちの間であらためて
「人生をどう生きるか」ということを考え直さざるを得なくなった。

私はこんな提案をしたい。
●定年前、定年後という発想から脱却する。
●50歳からが第3期のスタート、75歳まであるのだと意識する。
●この時期を「人生の黄金期(ゴールデンエイジ)」として、
どれだけ充実させられるか、どれだけイキイキ過ごせるかを考え、実践する。

人生の黄金期の定義を考える。
「人生を豊かなものにするため、自分の衰えと上手に付き合いながら、
自分の価値感に即した生き方、魂が喜ぶ生き方を目指す…」
これは、75歳までリタイアしない生き方だ。

「人生を前向きに生きる意志」を捨てない、
「心の現役感」を失わないということだ。
人生100年時代においては、「老後」とか「余生」は75歳を過ぎてからだ。
65歳になると介護保険被保険者証が届き、前期高齢者と言われるが、
自分自身の意識として、「まだ老境にあらず」という意志を持ちつづける。
この時期に自分の価値感に即した生き方、魂が喜ぶ生き方を見出した人は、
75歳以降も、生きるエネルギーを上手に燃やして、
イキイキと過ごすことができる。

105歳で亡くなった日野原重明先生は、生涯現役を貫かれた。
100歳を過ぎてからも、「2年後、3年後までスケジュールが入っている」と
にこやかにおっしゃっていた。
バイタリティにあふれ、次は何をしようかと
つねに考えておられた。
魂が喜ぶ生き方を見出し、それを実践し続けられた。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より