田村潤

「日本企業の多くが、オーバー・プランニング(過剰計画)、
オーバー・アナリシス(過剰分析)、オーバーコンプライアンス(過剰法令遵守)の
“3大疾病”に陥っている」(野中郁次郎氏)

営業がうまくいかない要因は、第一に本社の戦略立案能力の低下。
第二の要因は現場の力が落ちていること。

営業現場は本来自分で判断できること、判断すべきことを
一つひとつ本社にお伺いを立ててくる。
本社の企画部門は、似ているケースがないか全国を調べ、
部門で議論したうえで、上司に相談し、許可が下りれば現場に指示している。
これは現場の責任回避。

これでは本社も現場も責任感が芽生えず、戦略立案能力や現場力が
向上するわけがない。
本社の指示に従っても歯車はうまく回らず、業績は下がり続ける。
ここから脱却するには、自力で歯車を回すしかない。
PDCAサイクルには、もっとも重要なP(計画)を
どのように生み出すかが示されていない。

■アメリカ海兵隊で用いられている意思決定プロセス「OODA(ウーダ)ループ」
Observe(観察)→Orient(情勢判断)→Decide(意思決定)→Act(行動)。
現場に蔓延する「やらされ感」を払拭し、新たな価値を創出し続けるには、
その会社の理念と、あるべき姿を確立させることが一番。

高知支店が見出した理念は、「高知の人たちにおいしいキリンビールを
飲んでもらい、喜んでもらい、明日への糧にしてもらうこと」。
その実現のためのあるべき姿とは、「どの店に行っても
いちばん目立つ場所にキリンビールが置いてあり、
欲しいときに飲んでいただける状態を営業がつくる」こと。
結局、最後にメンバーがついてくるのは、
「リーダーの言うとおりにしたら数字が上がった」これに尽きる。
限られた戦力を活かすには直接戦略より間接戦略が有効だが
顧客の価値に結びつかない。
仕事はしない本社の指示を「したがうもの」から
「活用するもの」に変えるノウハウはすぐ真似される。
しかし、行動スタイルは簡単に真似できない。

エンジンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾より