マーク・ヴァンホーナッカー

優れたビジネスは、人間の知覚(パーセプション)を

変えるものですが、

そのために起業家は、常日頃から人とは違った知覚を得るよう、

努力していなければなりません。

(スタートトゥデイの前澤友作さんが月旅行に挑んだり、

バスキアを買ったりするのも、

おそらくそういう意識からでしょう)

私にとって飛ぶことは、あらゆる拘束からの解放であり、

自分の原点を見いだすことでもある

母に薦められて読んだ『スチュアート・リトル』や

『ホビットの冒険』は、幼い私の冒険心をくすぐり、

この世には、高いところや遠いところへ行かないと

見えないものがあることを教えてくれた。

人は飛ぶことで故郷を離れるが、

最終的には故郷こそが人生の宝であり、目的地だと悟るのである

ときおり、そんなに長い時間、

コックピットにいて飽きませんか、と質問されることもある。

飽きたことは一度もない。

もちろん、疲れることはあるし、

高速で家から遠ざかっている最中に、

これが家に向かっているなら

どんなにいいかと思うこともある。

それでも、私にとってパイロットに勝る職業などない。

地上に、空の時間と交換してもいいような時間があるとは

思えない

空には空の領域があり、

ひとつひとつの領域が歴史を持った空の国だ。

たとえば日本はすべてひとつの領域に含まれるが、

その名は日本ではなく福岡だ。

航空図の上の福岡空港で、

私たちは札幌コントロールから東京コントロールまで、

さまざまな管制官と交信する

空を飛ぶときは地上の常識を捨てなければならない

着陸後にビーチへ行くと、自分も、旅客機も、

ロサンゼルスという町も、アメリカという国の歴史も、

すべてが西を向いていることがわかる。

そこは終着点であると同時に、

新たな冒険の始発点でもあるのだ

ほかにもこの仕事ならではのやりがいがあって、

それは新聞配達をしていた十代の頃に感じたやりがいと

似ているように思う。

たとえば氷点下で雪がちらつく朝など、

仕事に行くのがいやだったけれど、

つらいからこそ世界がまだ眠っている時間帯に、

誰に褒められるわけでもなく新聞を配っている自分に

ささやかな誇りを持てた

ブダペストへ一緒に飛んでから一年半後、父が亡くなった。

それから数カ月というもの、

乗客のなかに誰かの死や重い病が原因で旅をしている人が

何人いるだろうと、そんなことばかり考えていた

自分がどこにいるのか混乱したとき、

数日前はどの大陸にいたかがぱっと思い出せないとき、

私はあえて、飛ぶことによってどれほど

帰るべき場所への愛が深まったかを考える

すべての着陸は、あらゆる可能性から、

けっして揺らがない場所へ、愛情の源へと帰ることだ

エンシンオイル、メーカー、OEM仲間の経営塾