齋藤孝

議論をしていると、とにかく波風を立てないように無難にまとめようとする人がいます。これは会議でも同様で、司会者によってはひたすら秩序を保ちつつ、平穏無事に1時間の会議を終えようとします。
しかし、そこからは新しい発想は生まれません。

議論や会議は、「秩序(コスモス)」と「混沌(カオス)」がほどよく行ったり来たりする状態が理想です。
コスモスだけに終始してしまうと、議論はそこに小さく収まってしまって、新しいアイデアは生まれてきません。まとまりかけたコスモスに、大胆な角度から予期せぬ意見を放り込むと、ある種の混乱が起きて会議はカオス化します。見たことがない発想が生まれるのは、そういうときなのです。

予定調和で終わらせないというのが大事なポイントです。
一方、そういった斜め上の意見だけで1時間話し合っても、会議は永久にまとまりません。尖った意見の数々を練り上げながらコスモス化していく。この作業を繰り返すうちに、参加者のアイデアが混ぜ合わさったような、重層的に折り重なった結論が 導き出され、結果として会議は充実したものとなるわけです。

これは、普段の会話でもそうですし、講演会で聴衆の前で話すようなときも同じです。たとえば、本の話をするとき、ひたすらその内容のすばらしさを説くというやり方でもいいのですが、あえて「本は絶滅する運命にある」とか「電子情報の一部となっていく」などと言い出してカオスを起こし、「それでもなぜ人は紙の本に魅せられるのか」とコスモスにもっていくと、奥行きと幅ができ、おもしろい展開が生まれる。

《コスモスとカオスを行き来して情報を整理する・・・秩序だけでは斬新な発想は生まれにくい》

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